2019年06月27日、経営の立て直しを急ぐ曙ブレーキ工業が開催した定時株主総会において、経営陣への厳しい視線が注がれました。臨時報告書によって判明した信元久隆会長兼社長の取締役選任に対する賛成率は77%にとどまり、2年前の総会で得ていた9割という圧倒的な支持からは大幅に後退する結果となっています。この数字は、相次ぐ業績の低迷や混乱に対する株主の不信感が、数字として如実に表れたものと推測されます。
SNS上では「かつての名門企業がここまで苦戦するとは」「経営陣の責任の取り方が問われる局面だ」といった、危機感を共有する投資家の声が散見されました。今回の総会は、2019年01月に私的整理の一種である「事業再生ADR」を申請してから初めての直接対話の場です。事業再生ADRとは、裁判所を介さずに債権者と協議して倒産を回避する手続きのことですが、この特殊な状況下で、株主は経営の継続性に疑念を抱いたのでしょう。
2019年03月期の連結決算は、前期の黒字から一転して182億円という巨額の最終赤字を計上しました。業績の悪化に呼応するように、他の取締役の支持も前回比で約1割低下しており、経営の中枢を担うメンバー全員が厳しい評価にさらされています。筆者としては、これほどまでの支持率低下は、単なる業績への不満だけでなく、現状を打破するための具体的なスピード感が欠けていることへの警告ではないかと感じております。
さらに注目を集めたのは、買収防衛策の継続案に対する支持が74%にとどまった点です。この施策は、特定の投資家による急な株式買い占めから企業を守る仕組みですが、近年は「経営陣の保身に使われる」との批判も少なくありません。昨今のコーポレートガバナンス、いわゆる「企業統治」の観点からも、経営陣を安易に守る仕組みには国内外の投資家が厳しいNOを突きつける傾向にあり、今回の結果はその潮流を象徴していると言えるでしょう。
新素材開発がもたらす希望の光と今後の再建スケジュール
一方、全ての議案が否定的に捉えられたわけではありません。定款の内容に「医薬品や化粧品、およびその原料」といった項目を追加する議案については、なんと97%という極めて高い支持を得ることに成功しました。これは、環境負荷の低いブレーキ摩耗材の研究過程で誕生した「新素材」が、自動車部品の枠を超えた収益源になる可能性を秘めているためです。既存事業の苦境を新領域で補おうとする姿勢には、明るい兆しが見えます。
会社側も組織の活性化に向けて、2019年06月01日付で執行役員を28名から12名へと大幅に削減し、経営の意思決定スピードを上げる体制を整えました。信元会長をはじめとする経営陣は、自らの報酬削減を実施することで、痛みを伴う改革への覚悟を示しています。こうしたスリム化の動きが、単なるコストカットに終わらず、実効性のある成長戦略に繋がるかどうかが、再建を成功させるための大きな鍵を握るはずです。
運命を左右する今後の予定として、2019年07月22日と2019年09月18日に債権者会議が開催される予定です。ここでは具体的な再建計画の是非が審議されますが、株主のみならず銀行などの債権者、そして支援企業の三者から納得を得ることは容易な道のりではありません。しかし、新素材という武器を手にした曙ブレーキが、この苦境をバネに再生へと舵を切れるのか、マーケットは固唾を飲んでその行方を見守っています。
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