世界を股に掛ける技術屋集団、日機装が大きな一歩を踏み出します。同社は現在、ポンプ事業と航空機部品事業における国内生産体制を根本から見直す、大規模な再構築プロジェクトを推し進めています。その中核となるのが、東京都東村山市にある歴史ある「東村山製作所」の機能を、宮崎県へと大胆に移管・集約させるという計画です。この決断は、単なる拠点の移動ではなく、次世代を見据えた戦略的な「攻めの投資」と言えるでしょう。
SNS上では、このニュースに対して「地方創生につながる大きな決断」「宮崎が宇宙やエネルギー産業の拠点になるのは胸が熱くなる」といった、期待に満ちた声が数多く寄せられています。今回の再編では、総額で100億円規模という巨額の資金が投じられる予定となっており、老朽化した設備を一新することで、国際競争力を飛躍的に高める狙いがあります。日機装は、成長著しい航空宇宙分野や、クリーンエネルギーとして注目される液化天然ガス(LNG)市場の需要を確実に取り込む構えです。
宮崎から世界へ!LNG需要を支える「超低温」の技術力
具体的には、東村山製作所が担当してきた「インダストリアル事業」と「航空宇宙事業」を、完全子会社である宮崎日機装の宮崎工場へと移します。2019年07月31日に発表されたこの計画では、2021年までに新工場の建設と移管作業をすべて完了させる見通しです。東村山で製造されている「クライオジェニックポンプ」は、マイナス160度を越えるような極低温の状態にある液化ガスを運搬するための特殊なポンプであり、世界的なLNG需要の拡大において欠かせない存在となっています。
あわせて、化学プラントなどで活躍する「キャンドモータポンプ」の生産も集約されます。これは、液体が外に漏れ出さないよう、モーターとポンプを一体化させた高度な密閉構造を持つ製品のことです。中東や米国での大型プロジェクトが相次ぐ中、これらの製品は日機装の収益を支える屋台骨となっています。しかし、1960年の稼働から約60年が経過した東村山の施設では、増え続ける注文に応えるための生産能力の拡張が物理的に困難となっていました。
そこで白羽の矢が立ったのが、拡張性に富み、アジア諸国への輸出にも有利な立地を誇る宮崎工場です。日機装は約95億円を投じて生産能力を増強し、新たに100名程度の雇用を創出する方針を固めました。私は、この決断こそが、日本のものづくりが直面している「老朽化」と「グローバル化」という二つの課題に対する、一つの理想的な解法であると確信しています。地方に高度な技術を集約させることは、企業の強靭化と地域経済の活性化を同時に成し遂げる素晴らしい挑戦です。
ラスベガスから宮崎へ。一貫生産がもたらす圧倒的なコスト競争力
今回の投資の中でも特に注目すべきは、約55億円をかけて2020年までに建設される、クライオジェニックポンプ専用の試験設備でしょう。これまでは、実際のLNGを用いた最終検査を行うために、わざわざ製品を米国のラスベガスまで輸送して試験を行っていました。国内では液化窒素による代用試験にとどまっていましたが、宮崎に自前の試験設備を持つことで、生産から最終検査までを一気通貫で行える体制が整います。
この変化がもたらすメリットは計り知れません。米国への輸送コストが大幅に削減されるだけでなく、顧客への納期も劇的に短縮されることになるでしょう。品質管理の精度が向上し、まさに「メイド・イン・ジャパン」の信頼性をさらに高める結果となるはずです。このように、自社でインフラを保有してプロセスの最適化を図る姿勢からは、単なるコストカットではない、品質への強いこだわりと自信が感じられます。
世界シェア9割を誇る航空機部品と、未来へ向けた拠点の再構築
日機装の強みはポンプだけにとどまりません。航空宇宙事業においては、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を使用した「カスケード」と呼ばれる部品で、世界シェアの9割以上を独占しています。これは航空機のエンジンが着陸時に逆噴射を行う際、空気の流れを制御するための重要なパーツです。2018年に竣工した宮崎工場と金沢製作所の2拠点に生産を統合することで、より効率的で強固なサプライチェーンを構築していく予定です。
さらに、機能の入れ替えは生産拠点だけではありません。東村山製作所には、静岡県牧之原市にある技術開発研究所の機能が移され、新たな研究開発の拠点へと生まれ変わります。一方で、静岡の拠点は透析医療機器などの「メディカル事業」における物流や技術支援の要として活用される見込みです。2022年12月末までに予定されているこれら一連の再編によって、各拠点の役割はこれまで以上に明確化されていくに違いありません。
日機装の2019年12月期の業績予測によれば、連結売上高は1720億円、営業利益は110億円と、着実な成長が見込まれています。海外売上高比率が非常に高い同社にとって、国内の「マザー拠点」を強化することは、世界中の拠点に散らばる技術やノウハウを再び一つにまとめ上げ、稼ぐ力を最大化させるための鍵となるでしょう。日本が誇る高い技術力が、宮崎という新天地でどのように花開くのか、これからの展開から目が離せません。
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