AI時代を生き抜く「市場の番人」の覚悟。あずさ監査法人・高波博之理事長が描く2019年夏のDX戦略

2019年08月15日、企業会計の最前線で大きな変革の波が押し寄せています。AI(人工知能)が監査現場へ本格的に導入される中、日本を代表する大手監査法人の一つである、あずさ監査法人が新たな一歩を踏み出しました。就任間もない高波博之理事長は、目まぐるしく変化する経営環境を「かつてないスピード」と表現し、市場の信頼を守るためのデジタルシフトを力説しています。

これまで監査といえば、人間が膨大な書類と格闘する姿が一般的でしたが、同法人は2019年07月に専門部署を設立し、データサイエンティストら200名体制で業務のデジタル化を加速させています。これにより、企業のデータをリアルタイムで解析し、不審な動きを即座に察知する次世代型監査の実現を目指しているのです。テクノロジーの進化を脅威と捉えるのではなく、むしろ強力な武器として活用する姿勢が鮮明に打ち出されています。

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デジタル人材の倍増と「考える監査」への意識改革

高波理事長は、2020年07月までにデジタル関連の専門家を現在の2倍にあたる400名体制にまで拡充する意向を示しました。ここで注目すべきは、単にITの専門家を増やすだけでなく、公認会計士一人ひとりの「デジタルリテラシー」、つまり情報を正しく理解し活用する能力の向上も重視している点です。監査の品質を維持しながら、いかに効率を高めるかという難題に対し、組織全体で知恵を絞る姿が伺えます。

SNS上では、こうした監査法人の変化に対して「AIで会計士の仕事がなくなると思っていたが、実際はより高度な判断に特化していく流れなのだ」といった、前向きな驚きの声が広がっています。また、同法人では2017年から深夜や早朝のシステムアクセス制限などを導入し、残業時間を25%も削減することに成功しました。これは単なる時短ではなく、何が重要で何を簡略化すべきかを見極める「考える監査」への意識改革が結実した結果と言えるでしょう。

私は、この「考える監査」というキーワードこそが、AI時代における人間の価値を象徴していると感じます。単純な照合作業を機械に任せ、人間は企業の健全性を深く洞察する。こうした役割分担こそが、真の意味での働き方改革であり、監査という職務の魅力を再定義するはずです。最短距離で最大の成果を出すという方針は、労働人口が減少する日本社会において、あらゆる業界が模倣すべきロールモデルになるに違いありません。

日本特有の不正リスクとグローバルな品質管理の行方

一方で、企業の不正リスクに対する眼差しは厳格です。高波氏は、海外の個人利益を目的とした不正とは異なり、日本企業特有の「上司への忖度」や「組織からのプレッシャー」が原因となる不正に警鐘を鳴らしています。いわゆる中間層が、組織の意向を汲み取りすぎて一線を越えてしまうリスクを回避するためには、個人の良心に頼るだけでなく、不正が起こり得ない「内部統制」の仕組み作りが不可欠であると説いています。

さらに、提携先であるKPMGが英国で直面した批判についても、高波理事長は逃げることなく言及しました。かつての収益至上主義から、信頼を第一に置く姿勢へと舵を切ったKPMGの変革を支えるべく、日本からも品質管理体制の強化に参画する決意を固めています。信頼こそが唯一の資産である監査法人にとって、この原点回帰は、AIがどれほど進化しても変わることのない、最も重い経営課題となることは間違いありません。

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