ベビー・子供服の専門店としておなじみの西松屋チェーンが、これまでの国内市場中心のビジネスモデルから大胆に舵を切り、海外展開に本格的に乗り出しました。長年の強みであるプライベートブランド(PB)製品を武器に、アジア圏の小売店への供給を2019年春からスタート。さらに2019年7月からは、中国の巨大な電子商取引(EC)モールでの販売も本格化させる計画です。国内市場では、ユニクロやしまむらといった強力な競合他社との競争が激化しており、新たな成長の活路を海外市場に見出す戦略と言えるでしょう。
西松屋の新たな海外戦略の背景には、インバウンド(訪日外国人客)消費の盛り上がりがあります。これまでは国内での売上がほぼすべてを占めていましたが、東京・台場のような都心に位置する店舗では、訪日客の利用比率が顕著に高まっているそうです。この高まる知名度と信頼感を、訪日客が帰国した後も継続して消費する**「帰国後消費」**という形で取り込むことを狙っています。この戦略を強力に推進するため、同社は2018年9月に丸紅出身者をグローバル事業推進部長に迎え入れ、2019年5月には同事業部の人材を22名補充し、総勢26名体制へと大幅に陣容を強化しています。
体制を整えた西松屋は、2019年4月より、アジアの代理店を経由して現地の小売業へPB製品の供給を始めています。具体的には、おしりふきやベビーソープなどの消耗品を中心に、中国のスーパーマーケット「銀泰西選」約30店舗、ベトナムの日本製日用品専門店「さくこ」約20店舗、台湾のベビー・子供服専門店約180店舗といった、複数の国と地域をターゲットに展開中です。今後はアジア全域の現地および日系のドラッグストア、スーパー、コンビニエンスストアなど、多岐にわたる小売チャネルを開拓していく方針のようです。
ブランドの信頼性をテコに海外EC市場へ進出
さらに、訪日客へのPRとして、2019年9月までの期間限定で羽田空港に出店しているほか、今後は関西国際空港などの国際線免税品売り場での常設販売も視野に入れています。こうした取り組みを通じて、西松屋ブランドのファンとなる訪日客を増やし、帰国後の消費へとつなげる狙いがあるのです。そして、海外市場開拓の柱となるのが、2019年7月から本格的に販売を開始する中国最大のECモール**「天猫(Tmall)」での展開です。現地パートナー企業がサイト運営を担う卸売の形態を取ることで、物件の賃借や現地での人材雇用などの初期投資やリスクを抑える賢明な方法を選択しています。現時点では直営店を開設する計画はなく、堅実な一歩を踏み出していると言えるでしょう。
西松屋は、海外展開の成否を握るPB商品の開発に、長年力を注いできました。自社にものづくりのノウハウが少なかったため、2009年頃からはパナソニックやシャープなどの大手家電メーカー出身の中途採用者を商品開発部門に積極的に起用している点が特筆されます。これらの社外人材の持つ商品企画、海外の生産委託先との交渉、そして品質管理といった専門的な経験を最大限に活用し、年間100万枚を売り上げる779円のストレッチパンツのような大ヒット商品も生み出しました。このパンツは、子供がしゃがんでも背中が見えにくい工夫が施されており、親目線での使いやすさが好評を博しているようです。
2019年2月期時点で、西松屋のPB商品数は約3,600点にまで増えており、これは2018年2月期と比較して約6割もの増加となります。全商品に占めるPBの割合は1割強ですが、「エルフィンドール」(子供服)や「スマートエンジェル」(雑貨)といったPBブランドの知名度は着実に向上しています。PB商品は、メーカー品に比べて粗利益率が10ポイントほど高い約50%弱となっており、利益面での貢献度が非常に大きいと言えるでしょう。同社は、現在13%のPB比率を早急に50%まで高める**ことを目標としており、この強みであるPB商品が、国内での競争激化を乗り越え、海外市場を開拓する最大の武器となることは間違いありません。
衣料専門店によるベビー・子供服の強化という厳しい競争環境も影響し、西松屋の2019年2月期の業績は売上高1,381億円(1%増)に対し、経常利益は39億円(45%減)、最終利益は21億円(54%減)と、利益面で大きな落ち込みを見せました。しかし、2020年2月期はPBの売上拡大を牽引力として、売上高1,450億円(5%増)、経常利益65億円(65%増)、最終利益40億円(85%増)と大幅な回復を見込んでいます。国内外でのPB商品の積極的な拡販によって、同社は2024年2月期には売上高1,800億円、経常利益180億円という高い目標達成を目指しているのです。SNS上では「西松屋のPBはお財布に優しくて品質も良いから海外でも人気出そう」「赤ちゃん用品は安心できる日本製が一番。海外展開は嬉しいニュース!」といった、期待を寄せる声が多く見受けられ、今後の海外市場での躍進に注目が集まっていると言えるでしょう。
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