かつて「浪速のウォール街」として栄華を誇った大阪・北浜の景色が、今まさに一変しようとしています。1973年当時には60社を数えた関西の証券会社ですが、2019年3月31日時点では21社にまで激減してしまいました。わずか45年ほどの間に、従業員数も1万人規模から半減するという厳しい現実に直面しています。古き良き証券街の象徴だった場所には、今や高層マンションやホテルが建ち並び、かつての喧騒は遠い記憶になりつつあるようです。
SNS上では「北浜の凋落が悲しい」「もう店舗に行く時代じゃないのかも」といった、時代の変化を憂う声が多く上がっています。この地盤沈下の最大の要因は、言うまでもなく東京への一極集中と、IT技術を武器にしたネット証券の台頭です。物理的な距離に関係なく、スマートフォン一つで低コストな取引ができる現代において、伝統的な対面営業を主体とする地方証券は、非常に苦しい戦いを強いられているのが現状といえるでしょう。
資産運用への意欲は全国屈指!眠れる関西マネーの潜在力
しかし、関西の投資ポテンシャルが決して低いわけではありません。実は、関西圏は全国でも有数の「投資好き」な地域なのです。2019年当時の調査データを紐解くと、奈良県における株式や投資信託の世帯保有比率は25.9%に達し、東京都に次ぐ全国2位を記録しています。また、和歌山県における1世帯あたりの平均残高も982万円と非常に高水準です。これほど豊かな資産がありながら、地元の証券会社がその恩恵を十分に受けられていないのは、実にもったいない話です。
こうした関西の資産家層に対し、地場証券も手をこまねいているわけではありません。例えば、岩井コスモ証券は米国株に注力し、内藤証券は中国株のパイオニアとして独自の地位を築いています。また、光世証券のようにデリバティブ取引に特化する企業も見られます。「デリバティブ」とは、株式や債券といった元々の金融商品から派生して誕生した取引の総称で、少額で大きな利益を狙える反面、リスク管理も重要となる高度な運用手法を指します。
強みを持つ各社ですが、共通する悩みは顧客の高齢化です。現在、個人投資家による株式売買の8割以上がネット証券経由となっており、デジタルネイティブな若年層の獲得は至難の業となっています。私は、地場証券が生き残るためには、これまでの「御用聞き」的な対面営業から脱却し、ネット証券には真似できない専門性の高いコンサルティング能力を磨くしかないと考えています。信頼関係こそが、デジタル時代の最大の武器になるはずだからです。
銀行の参入と2020年の「総合取引所」構想が再生の鍵
停滞する業界に新風を吹き込んでいるのが、地元銀行による証券ビジネスへの参入です。2017年05月01日に開業した京銀証券は、わずか2年足らずの2019年02月には目標の2万口座を突破しました。また、2018年10月には南都銀行が奈良証券を子会社化するなど、銀行の顧客基盤を活かした新しいモデルが芽吹きつつあります。東京では異業種からの参入で社数が増加に転じており、関西でもこうした多様なプレイヤーの登場が待たれます。
大きな転機として期待されるのが、2020年に予定されている大阪取引所への商品先物移管です。日本取引所グループによる再編により、金や農産物といった商品先物も北浜で扱える「総合取引所」が誕生する見通しとなりました。これにより、デリバティブ市場の活性化や新たな投資機会の創出が見込まれます。この絶好の機会を捉え、関西の証券業界がいかにして「守り」から「攻め」へと転換できるか。北浜の再起を賭けた挑戦は、今まさに正念場を迎えています。
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