2019年08月23日、フランスのビアリッツで開かれた閣僚級協議において、日米貿易交渉がついに大枠合意に達しました。私たちの食生活に直結する牛肉や豚肉の関税が大幅に引き下げられる見通しとなり、日本国内では早くも期待と不安が入り混じった声が広がっています。茂木敏充経済財政・再生相と米国のライトハイザー代表による3日間にわたる粘り強い交渉は、年内の協定発効を見据えた大きな一歩となりました。
今回の合意で最も注目すべきは、米国産牛肉にかかっている38.5%もの高い関税が、段階的に9%まで引き下げられる点です。これは、環太平洋経済連携協定(TPP)に参加している国々と同等の水準を目指すもので、安価な米国産ビーフがより身近になることを意味しています。SNS上では「ステーキが安く食べられるようになるのは嬉しい!」といった消費者の喜びの声が目立つ一方で、国内農家への影響を懸念する意見も散見されました。
豚肉についても、劇的な変化が訪れようとしています。ソーセージなどの加工品に使われる低価格な豚肉の関税は、1キログラムあたり482円から最終的に50円へと大幅にカットされる予定です。また、トンカツなどで親しまれる高価格帯の豚肉については、4.3%の関税が最終的にゼロへと撤廃されます。スーパーの棚に並ぶハムやベーコンの価格が下がることは、家計を預かる世代にとって非常に魅力的なニュースといえるでしょう。
そもそも「関税」とは、海外からの輸入品に対して国が課す税金のことで、国内の産業を守る壁のような役割を果たしています。今回の引き下げは、その壁を低くして日米間の貿易をより活発にする狙いがあります。日米貿易協定が発効した瞬間に、先行しているTPP加盟国と同じ税率まで一気に引き下げられるという異例のスピード感からも、トランプ大統領の強い意向と両国の緊密な連携がうかがい知れます。
和牛の海外進出と自動車関税に残された課題
日本側にとっての大きな収穫は、米国が日本産牛肉に対して3000トンの無税枠を新たに設けることに合意した点です。現在、アメリカでは「WAGYU」として和牛の人気が急速に高まっており、この無税枠の活用によって日本の畜産農家にとって輸出拡大の絶好のチャンスが到来します。高品質な日本のブランド牛が世界へ羽ばたく姿を想像すると、一編集者としても非常に誇らしく、今後の展開が非常に楽しみでなりません。
一方で、日本の基幹産業である自動車に関する交渉は、一部で持ち越しとなりました。日本側が強く求めていた自動車本体の関税撤廃については、今回の合意には含まれず、貿易協定とは別の枠組みで今後も議論が続けられることになります。自動車以外の工業品については幅広い分野で関税撤廃が決まりましたが、日本の経済を支える「車」の行方が先送りされたことに対し、産業界からは慎重な見守りが必要だという声が上がっています。
2019年08月25日に開催される首脳会談では、9月下旬の最終妥結に向けた流れが正式に確認される予定です。食卓を豊かにする肉類の値下げと、国を挙げての輸出拡大という光が見える一方で、自動車産業の将来など課題も残る今回の合意。私たちは安さの恩恵を享受しつつも、日本の食の安全や産業競争力がどう守られていくのかを、これからも鋭い視点で見守り続けていく必要があるのではないでしょうか。
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