ヘルスケアに革命を!ナッジ理論で自発的に健康を手に入れる「損失忌避」の魔法とは?

日々の生活の中で「もっと運動しなきゃ」と思いつつも、つい腰が重くなってしまう経験はありませんか。そんな私たちの背中を、まるで魔法のように優しく、しかし確実に押してくれるのが「ナッジ(nudge)」という行動経済学の理論です。ナッジとは英語で「ひじで軽くつつく」という意味を持ち、強制や禁止ではなく、環境を少し整えることで人々のより良い意思決定を促す手法を指します。2019年08月28日、NTTデータ経営研究所の北野浩之氏が、このナッジをヘルスケア分野に応用する可能性について極めて興味深い洞察を示されました。

例えば、あなたが健康的な生活習慣を身につけるための保険を選ぶ際、二つの選択肢を提示されたらどちらに惹かれるでしょうか。一つは「毎日歩くなどの健康的な生活を続けたら、後で保険料が安くなる」というサービスです。そしてもう一方は「加入した時点でまず保険料が割引されるものの、健康的な生活を送らなければ保険料が元の水準に上がってしまう」というサービスになります。直感的には前者も魅力的ですが、実は心理学的な研究によれば、後者のプランの方が人々を「健康になろう」と突き動かす力が圧倒的に強いという結果が出ているのです。

なぜ、最初に得をするパターンの方が私たちのモチベーションを高めるのでしょうか。そこには人間が持つ「損失忌避(そんしつきひ)」という心理的特性が深く関わっています。これは、新しく何かを手に入れる喜びよりも、今あるものを失うことに対する苦痛をより大きく感じ、それを避けようとする本能的な傾向のことです。既に手にした「割引」というメリットを失いたくないという思いが、私たちを運動不足や不摂生から遠ざける強力なエンジンへと早変わりするわけですね。SNS上でも「失うのが怖くて歩くようになった」といった声が上がり、大きな注目を集めています。

この人間の性質を巧みに取り入れた画期的なサービスが、住友生命保険から登場しました。2018年07月24日に発売された健康増進型保険「Vitality(バイタリティ)」は、まさにこの損失忌避のメカニズムを実装した先駆けと言えるでしょう。単にリスクに備えるだけの従来の保険とは異なり、契約者の健康状態や活動量に応じて特典を維持できる仕組みは、ヘルスケアの未来を明るく照らしています。個人的には、このように個人の自発性を尊重しながら自然と社会全体の健康増進に繋がる取り組みは、非常にスマートで温かみのあるアプローチだと確信しています。

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