2019年6月14日、第20回を迎える「日経STOCKリーグ」の開幕を前に、参加校を指導する愛媛県立松山東高校の教諭、三好千聖先生の取り組みが大きな注目を集めています。この大会は、生徒たちが株式投資のシミュレーションを通じて、企業分析や経済の仕組みを実践的に学ぶことを目的としています。三好先生が指導を始めてから、これまでに合計9チームが参加し、高校生たちが社会やキャリアに対する視点を大きく広げる貴重な機会を提供しているのです。
三好先生の指導のもと、高校1年生の夏頃に呼びかけられた生徒たちは、3〜5人の班を組み、熱意を持って活動をスタートさせます。大会のテーマは、生物、ロボット、漫画、宇宙など、生徒の興味や関心に合わせて非常に自由で多岐にわたります。部活動や習い事と両立させながら、生徒たちは概ね2週間に1度の頻度で集まり、あるいはインターネット上で活発な議論を交わします。特にレポート提出が迫る時期には、ほぼ毎日集まって切磋琢磨しており、これはまさに生徒たちにとって、かけがえのない青春の一ページとなっていると言えるでしょう。
先生が特に重視しているのは、学校の教室の中だけにとどまらない、「校外での学び」です。例えば、宇宙産業をテーマに選んだ班は、地元で開催された世界最大級の宇宙国際会議に積極的に足を運びました。彼らは事前に綿密な準備を行い、日本語と英語で作成した質問票を用い、今後成長が見込まれる分野や、興味深い投資テーマについて約20人の専門家に直接尋ねるなど、果敢な行動力を示しました。さらに、宇宙産業の現場を肌で感じるため、アメリカの企業などに製品を納める予定の東レ愛媛工場を見学したり、関連産業の非上場の地元企業も訪ねるなど、その探究心には目を見張るものがあります。重要なのは、こうした訪問先や調査対象をすべて生徒自身が決定しているという点にあります。
参加する生徒のほとんどは、最初は投資についてほとんど知識がありません。そのため、まずは野村證券が提供している教材を活用し、株式投資の基本や、企業財務に関する基礎的な知識を習得することから始めます。その後、学んだ知識を活かして、実際に投資する銘柄を選定していくのです。例えば、裾野が広い宇宙産業をテーマにした場合、**自己資本利益率(ROE)や株価収益率(PER)といった財務指標を用いて、投資対象の銘柄を絞り込んでいきます。ROEとは、企業が自己資本をどれだけ効率的に活用して利益を生み出しているかを示す指標で、PERは株価が1株当たりの純利益の何倍かを示す、割安感や期待度を測る代表的な指標です。これらの専門用語を使いこなし銘柄を分析する過程で、生徒たちは株式投資を身近に感じる感覚、つまり「アンテナ」**が研ぎ澄まされていくのです。
日経STOCKリーグがもたらす「人間的成長」と「キャリア教育」
チームでの作業を通じて、生徒たちのそれぞれの個性や長所が自然と発揮され、「人間的成長」を促すことも、この大会の大きな魅力です。柔軟でユニークな発想を出すのが得意な生徒、膨大なデータを集めて分析することに強みを持つ生徒、チーム全体をまとめ上げて引っ張っていくリーダーシップを発揮する生徒など、誰もが自分自身の持ち味を最大限に活かし、羽ばたける場所があるのです。
この経験は、将来の夢や進路を明確にする「キャリア教育」としても非常に有効です。実際に参加した生徒の中には、この経験をきっかけに、大学で数学科への進学を目指したり、卒業後に金融分野を専攻したりするケースが出ています。また、投資テーマの調査で医療分野に深く触れたことから、将来の進路として医療分野を選んだ生徒もいるそうです。ある卒業生は、日経STOCKリーグを通じて経験した「すてきな大人との出会い」が一番の財産だったと振り返り、現在は国連職員になるという大きな夢を追いかけているとのことです。これは、生徒たちが社会の第一線で活躍する大人たちと直接触れ合い、その熱意や考え方に感化されることの重要性を物語っています。
三好先生(1996年愛媛大学卒業)は、愛媛県内の高校教諭として23年間勤務し、2008年から現職に就かれています。通算9チームを指導されてきた経験から見ても、日経STOCKリーグは単なるコンテストではなく、生徒が自信を持ち、社会や経済、そして自らの未来に対する視座を高める、極めて有効な**「実践型キャリア教育」**の場だと私は強く感じています。生徒たちは、この貴重な経験を通して、金融リテラシーだけでなく、社会で生き抜くために必要な非認知能力も育んでいると言えるでしょう。
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