2019年09月11日、金融庁がかんぽ生命保険と日本郵便への立ち入り検査に踏み切ったニュースは、社会に大きな衝撃を与えました。今回の不適切販売問題を巡り、2019年09月30日には外部弁護士による特別調査委員会の中間報告も公表されています。そこから浮き彫りになったのは、現場の郵便局員が抱える切実な声が、本社の経営陣まで全く届いていなかったという絶望的な断絶の構図でした。
特に注目すべきは、2019年09月17日に金融庁の主任検査官が全国の郵便局員へ直接送った異例のメールでしょう。そこには、組織の評価基準や営業目標の実態について、個人のスマホから「何でも聞かせてほしい」という切実な呼びかけが記されていました。SNS上では「ここまでしないと実態が掴めないのか」「組織の自浄作用が死んでいる証拠だ」といった厳しい意見が相次ぎ、郵政グループへの不信感はピークに達しています。
「言っても変わらない」現場に蔓延する諦めと内部監査の限界
日本郵政の長門正貢社長は2019年09月30日の記者会見にて、情報が適切に上がってこなかったことを認め、新たな「アンテナ」を設置すると表明しました。具体的には、2007年の郵政民営化時に定められた権限を初めて行使し、持ち株会社が子会社を直接監査する体制を検討し始めています。しかし、わずか数十名規模の監査部門で全国2万もの郵便局をカバーすることには、物理的な限界があると言わざるを得ないでしょう。
2019年10月02日に金沢市で開催された対話集会では、局員から「どうせ言っても何も変わらない」という悲痛な本音が漏れました。これは、過去に何度も現場が問題を指摘したにもかかわらず、本社側がそれをもみ消し、矮小化(問題を実態より小さく見せること)してきた積み重ねの結果です。不祥事は突発的に起きたのではなく、リスクに対する感度の低さと、顧客を軽視する企業体質が招いた必然の帰結だったのです。
編集者の視点から言えば、どれほど優れた監査システムや会議体を作ったとしても、現場の人間が「話せば報復される」と感じている限り、真実は闇に葬られたままです。今回の不祥事は、単なるルールの不備ではなく、経営陣の「聴く力」の欠如が招いた人災です。形だけの組織改革ではなく、まずは現場との信頼関係をゼロから再構築し、一人ひとりの局員が誇りを持って働ける環境を取り戻すことこそが、再発防止の第一歩となるはずです。
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