東京都新宿区が2021年04月に予定していた独自の「児童相談所」開所を、約3年ほど先送りすることが決定しました。この決断の裏側には、深刻な専門職不足という避けては通れない壁が立ちはだかっています。子どもの命を守る砦となる施設だからこそ、安易なオープンよりも質の担保を優先した形です。
児童相談所、通称「児相(じそう)」とは、18歳未満の子どもの福祉を守るために、家庭での虐待や非行、発達の悩みなどの相談に応じる専門機関です。近年、痛ましい虐待事件が相次いでいることを背景に、特別区が自前で児相を設置できる法律の改正が行われましたが、その運用には高度なスキルを持つ職員が欠かせません。
今回の延期について、SNS上では「中途半端な状態で開けるよりは賢明な判断」という声がある一方で、「待機児童ならぬ待機虐待が起きるのでは」と不安視する投稿も見受けられます。現場の専門性を重視する姿勢は評価されるべきですが、その準備期間中に支援が必要な子どもたちがこぼれ落ちないか、注視していく必要があるでしょう。
専門人材の確保という高いハードルと自治体が抱えるジレンマ
なぜ、3年もの延期が必要になったのでしょうか。その最大の要因は、児童福祉司や児童心理司といった、子どもや保護者の心に寄り添い、法的な判断も行うスペシャリストの育成に膨大な時間を要するためです。一朝一夕に身に付く知識ではないからこそ、新宿区は2024年度ごろの稼働を目指して体制を整える方針を選びました。
私は、この決断は行政としての誠実さの表れであると感じています。ハコモノを作ることは比較的容易ですが、そこに魂を込める「人」がいなければ、適切な支援は届きません。しかし、人材難は新宿区だけの問題ではなく、日本全体が抱える構造的な課題です。国を挙げたバックアップや、資格者の処遇改善が急務であることは言うまでもありません。
2019年09月11日現在、虐待相談件数は全国的に増加の一途を辿っており、一刻も早い体制強化が求められています。新宿区がこの3年間でどのような研修プログラムを組み、信頼されるチームを作り上げていくのか、そのプロセス自体が他の自治体のモデルケースになるはずです。子どもたちの未来を守るための、粘り強い挑戦を期待しましょう。
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