世界の空の勢力図が、今まさに塗り替えられようとしています。2019年08月30日、中国の航空業界に激震が走るニュースが飛び込んできました。中国南方航空、中国東方航空、そして中国国際航空という同国のメガキャリア3社が、国産リージョナルジェット「ARJ21」をそれぞれ35機ずつ、合計105機も一斉に発注したと発表したのです。
「リージョナルジェット」とは、座席数が100席未満で、主に近距離の都市間を結ぶ小型旅客機を指します。今回のARJ21は78席から90席程度を備えており、日本が開発を進める「スペースジェット」のライバルとも目される機体です。1機あたりの価格は約3800万ドル、日本円にして約40億円という巨額の契約が、2020年から2024年にかけて順次履行される見通しとなっています。
SNS上では、この破格のニュースに対し「ついに中国が本気を出した」「ボーイングやエアバスの牙城を崩せるのか」といった驚きの声が上がっています。また、一部の航空ファンからは「日本の開発状況と比べて、中国のスピード感には危機感を覚える」といった複雑な心境も吐露されており、アジアにおける航空機開発競争の激化を肌で感じているユーザーが多いようです。
国家ぐるみの「買い支え」で狙う世界の頂点
今回の大量発注の裏には、中国政府による強力な「国産機振興策」が存在します。2019年02月には、中国民用航空局の幹部が「国産機の導入を積極的に奨励する」と公言しました。これに呼応するように、航空各社は専用の運航会社を設立するなど、単なる機体の購入に留まらない盤石な体制を整えつつあります。これは、国家の威信をかけた巨大なプロジェクトと言えるでしょう。
例えば中国東方航空は、傘下のビジネスジェット会社を「一二三(OTT)航空」へと改称し、ARJ21をメインに活用する路線計画を打ち出しました。当局は、国産機を導入することを条件に、通常は許可が下りにくい新路線の開設を認めるという「アメとムチ」の政策を使い分けている模様です。自国の巨大な市場を武器に実績を積み上げる手法は、いかにも中国らしい合理的かつ強力な戦略です。
私自身の見解としては、この「自国市場での徹底的な育成」こそが、航空機産業における後発組の勝ち筋だと感じます。かつて日本が経験したような「造ったけれど売れない」という悲劇を避けるため、川上の製造から川下の運航までを一貫して国がバックアップする姿勢は、極めて驚異的です。技術的な信頼性はこれからの検証課題ですが、この圧倒的な物量は脅威となるに違いありません。
ボーイング・エアバスに挑む次世代機「C919」の野望
中国の野望は、小型のARJ21だけに留まりません。彼らは現在、160席クラスの中型ジェット機「C919」の開発も猛スピードで進めています。これは、世界中の空を飛び回るベストセラー機、エアバスの「A320」やボーイングの「737」に真っ向から勝負を挑む機体です。2021年の安全認証取得を目指しており、すでに欧州の航空当局にも認証を申請するなど、海外輸出を明確に射程に入れています。
2018年の統計によれば、中国の航空旅客数は約6億7000万人に達し、前年比15.3%増という驚異的な成長を遂げています。世界第2位の市場規模を持ちながら、なおも二桁成長を続けるこの「空の需要」がある限り、中国製旅客機が世界中に羽ばたく日はそう遠くないかもしれません。米欧の2強体制が崩れ、三つ巴の時代が到来する予感に、世界中の業界関係者が固唾を呑んで見守っています。
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