2019年6月15日の報道によると、シャープの戴正呉会長兼社長は、同月14日に日本経済新聞の取材に応じ、シャープが液晶パネル事業の再構築に向けた極めて重要な一歩を踏み出す考えを明らかにされました。それは、堺市にある液晶パネル工場、通称「堺工場」を運営する堺ディスプレイプロダクト(SDP)を、シャープの子会社とする検討に入ったという驚きの表明です。このSDP子会社化の動きは、シャープが再びテレビ用の大型液晶パネル製造に本格的に挑戦し、「8K」を核とする高精細テレビ事業を強力に推し進めるための、まさに切り札となるでしょう。
シャープがテレビ用大型パネルの生産を強化したい背景には、高精細な映像を提供する「8Kテレビ」の市場を世界で創り出すという戦略があります。その基幹部品となる液晶パネルの安定供給と技術革新は、この戦略の成否を分ける鍵となりますが、現在のシャープの主要工場である亀山工場などで使用しているガラス基板ではサイズが小さく、大型パネルの生産効率はあまり高くないのが実情です。だからこそ、世界最大級の巨大なガラス基板で効率的な大型パネル生産が可能なSDPの「堺工場」が、戴会長の言う**「8K戦略を進める上で貴重な資産」として、再びシャープの傘下に収められようとしているのです。
この堺工場は、2009年にシャープが約4,300億円もの巨額を投じて稼働させた歴史があります。当時、効率性を追求したその巨大な設備は世界を驚かせましたが、結果として「過大な投資」となり、その後のシャープの経営危機の一因ともなったという、いわば「元凶」としての側面も併せ持っています。現在は、鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘董事長が持つ投資会社の傘下にあり、シャープにとっては持分法適用会社という位置づけです。過去の苦い経験がありながらも、戴会長は金融機関による資産査定などを経て、子会社化の検討を粛々と進める決意を固めていらっしゃいます。
SNS上での反響を見ますと、このニュースに対しては、シャープの「液晶のシャープ」としてのプライド復活を期待する声が多く寄せられています。「もう一度、日本で最先端の液晶を作ってほしい」といったコメントや、「8Kを普及させるには、SDPの力が不可欠だ」と戦略的な意義を評価する意見も見受けられました。一方で、「過去の失敗を繰り返さないでほしい」「財務リスクは大丈夫なのか」といった、かつての苦境を知るゆえの、慎重な声や懸念も聞かれています。特に、SDPの2018年12月期決算が、前の期の黒字から一転して284億円の赤字に陥ったことについては、シャープの業績を押し下げるリスクとなり得るとの指摘もあり、今後の動向に大きな注目が集まるでしょう。
私は、この戴会長の決断は、シャープが真の「技術立社」として復活するための、避けられない挑戦だと考えます。SDPを自社工場に組み込むことができれば、シャープが持つ独自の先進技術「IGZO」(イグゾー:Indium Gallium Zinc Oxideの略で、高性能な薄膜トランジスタ技術)を活用できるメリットが生まれます。IGZO技術は、よりなめらかな映像表現や省電力化を実現できるもので、これを大型パネルに適用できれば、韓国や中国のパネルメーカーとの激しい競争の中で、明確な差別化を図ることができるでしょう。液晶分野で一時代を築いたシャープの技術力をもってすれば、この再挑戦は必ずや成功するに違いない、と私は期待しています。
もちろん、財務面のリスクは無視できません。しかし、戴会長はすでに2019年からSDPの構造改革に着手し、新たな顧客基盤の獲得にも成功していると述べています。その結果、「年間で400億円程度のコスト削減」も期待できると、業績改善への強い自信を表明されているのです。この自信の根拠として、シャープは会社全体の方向性についても、「8K」「5G」「IoT」といった先端技術を駆使し、法人向けのシステムやサービス、ソリューションの拡大を掲げています。現在は部品関連を除く売上高のうち法人向けは35%ですが、これを50%まで引き上げたいという明確な目標があり、SDPの液晶パネルは、この法人向けシステムの中核部品としての役割も担うことになるでしょう。
また、戴会長は、これらの戦略を支える「技術者や人材が不足している」という現状を率直に認め、その解決策として、ターゲットを絞ったM&A(合併・買収)や提携戦略を通じて、必要なリソースを補完していく考えも示されました。ジャパンディスプレイ(JDI)についても、もし支援の要請があれば検討すると明言しており、液晶産業全体を視野に入れた、壮大で多角的な戦略を展開していることが見て取れます。このSDP子会社化の検討は、単なる一工場の再編ではなく、シャープが目指す「8Kと5Gを核とした次世代ビジネス」を牽引するための、まさに戦略的統合**だと言えるでしょう。今後の「堺工場」の動き、そしてシャープの描く未来図から、目が離せません。
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