今、音楽シーンに鮮烈な嵐を巻き起こしている女性アーティストをご存知でしょうか。アメリカ・デトロイト出身、現在31歳のラッパー兼シンガーソングライター、Lizzo(リゾ)がその人です。彼女は「新世代のプラスサイズ・ディーヴァ」として、これまでの美の概念を根底から覆す圧倒的な存在感を放っています。実力派としての評価は以前から高かったものの、2019年に入りその人気は爆発的なものとなりました。
特筆すべきは、2017年9月20日に発表された楽曲「トゥルース・ハーツ」の動向でしょう。リリースから約2年という歳月をかけ、2019年9月に見事全米シングルチャートで初の1位に輝きました。これほど長い時間をかけて首位に上り詰めるのは、音楽業界でも極めて異例のヒットと言えます。4月に発売されたメジャー初アルバム「コズ・アイ・ラヴ・ユー」が、彼女の多才な魅力を世に知らしめる大きな着火剤となったようです。
Lizzoの武器は、ゴスペルやソウルをルーツに持つ卓越した歌唱力だけではありません。切れ味鋭いラップに加え、ステージでフルートを吹きこなす抜群の演奏技術も兼ね備えています。SNSでは「フルートを吹きながら踊る姿が最高にクール」「彼女の自信に満ちた笑顔を見ると元気がもらえる」といった絶賛の声が相次いでおり、その天真爛漫なキャラクターは多くのファンの心を掴んで離しません。
彼女の楽曲が共感を呼ぶ背景には、現代社会に浸透しつつある「ボディ・ポジティブ」という重要な考え方があります。これは、世間が決めた特定の美の基準に縛られることなく、ありのままの自分の身体を肯定し、愛そうというムーブメントです。2019年8月に開催された「MTVミュージック・ビデオ・アワード」でも、彼女は巨大なお尻のオブジェを背に力強いダンスを披露し、自分を愛することの尊さを体現してみせました。
世界を席巻する「ありのまま」の価値観
このボディ・ポジティブの潮流は、Lizzo一人の現象に留まりません。かつてレディ・ガガが先駆者として発信し始めたこのメッセージは、今やファッションや広告の世界をも動かしています。例えば、リアーナが手掛ける「SAVAGE X FENTY」は、多様な体型や人種に対応したサイズ展開で大成功を収めました。対照的に、従来のセクシー路線を固守してきたブランドが苦戦を強いられている現状は、時代の転換点を象徴しています。
日本に目を向ければ、渡辺直美さんが海外メディアから熱い視線を浴び、4人組バンドのCHAIが「NEOカワイイ」を掲げて全米・全英ツアーを成功させるなど、確実に変化の兆しが見えています。CHAIが歌う「コンプレックスはアートなり」というフレーズは、まさにこのムーブメントの本質を射抜いているでしょう。誰かが決めた「正解の美しさ」ではなく、自分自身が自分をどう愛するかが問われる時代が到来しているのです。
編集者としての視点から言えば、Lizzoの成功は単なる音楽的快挙ではなく、生き方の提示であると感じます。デジタル技術でいくらでも外見を加工できる現代だからこそ、肉体という変えられない個性を誇る彼女の姿は、私たちの心に深く突き刺さります。2019年9月24日現在、彼女が示す「自己愛」のパワーは、今後日本のエンターテインメントシーンにもさらなる多様性と勇気をもたらしてくれるに違いありません。
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