2018年09月06日の未明、北海道胆振東部地震が平穏な町を襲いました。震源に近いむかわ町では震度6強という凄まじい揺れを記録し、町全体が深い傷を負ったのです。しかし、この絶望の淵に立たされた町には、未来を照らす大きな希望が眠っていました。それこそが、2019年09月に新種として学名が発表された、国内最大級の全身骨格化石「むかわ竜(カムイサウルス)」だったのです。
地震発生のわずか2日後、むかわ町では大規模な恐竜イベントの開幕を予定していました。中心人物である工藤弘氏は、自宅兼店舗が全壊するという過酷な状況に直面しながらも、復興への情熱を燃やし続けてきました。かつて販売していた「恐竜たい焼き」の型を作り直し、2019年04月には活動を再開させたのです。SNSでは「不屈の精神に感動した」「むかわ竜に会いに行きたい」といった応援の声が次々と寄せられています。
一方、九州の熊本県御船町もまた、恐竜の力を借りて力強い歩みを進めています。2016年04月の熊本地震では、町を象徴する御船町恐竜博物館も大きな被害を受けました。貴重な頭骨の化石が破損し、館内が救援物資の集積所となる苦境を経験したのです。しかし、学芸員の池上直樹氏らは諦めませんでした。専門用語で「プレパレーション(化石クリーニング)」と呼ばれる繊細な修復作業を経て、再び展示の灯をともしたのです。
現在、御船町では「発掘体験」が復興の起爆剤となっています。2018年度には7,000人以上の親子連れが参加し、ハンマーを手に大地の記憶を掘り起こす喜びを共有しています。SNS上では、化石を見つけた子供たちの輝く笑顔が拡散され、「復興のシンボル」としての認知が広がりました。町の人口を遥かに上回る年間15万人近い来館者を記録しており、観光資源としての恐竜が持つ潜在能力の高さが証明されたと言えるでしょう。
こうした地域活性化のロールモデルとなっているのが、福井県勝山市です。世界最大級の博物館を擁するこの地は、まさに「恐竜の聖地」として君臨しています。特筆すべきは、2019年04月に観光戦略アドバイザーとして招聘された荻野慎諧氏の存在です。彼は「古生物学(化石を研究する学問)」の専門知識を、単なる研究に留めず、地域の稼ぐ力へと変換させる「異端児」として注目を集めています。
私は、こうした恐竜によるまちづくりは、単なるブームではなく「地域のアイデンティティの再構築」であると考えます。災害で多くのものを失った時、数千万年前から足元に眠っていた太古の記憶が、現代に生きる人々の心を支え、立ち上がる勇気を与えるのは非常にドラマチックです。専門家が地域に深く関わり、その価値を翻訳して伝えることこそが、真の地方創生に繋がる鍵となるに違いありません。
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