2019年11月に予定されている皇室の重要行事「大嘗祭(だいじょうさい)」に向け、準備が着々と進んでいます。大嘗祭とは、天皇陛下が即位後初めて、新穀を神々に供えて自らも食し、国家の安寧と五穀豊穣を祈念する一代一度の極めて重要な儀式です。この儀式で献上されるお米を収穫するための神聖な儀式「斎田抜穂(ぬきほ)の儀」が、2019年09月27日に栃木県と京都府の2カ所で厳かに執り行われました。
東日本を代表する「悠紀(ゆき)」の地として選ばれたのは、栃木県高根沢町です。秋晴れの下、陛下の名代である抜穂使(ぬきほし)が厳粛に祝詞を奏上し、周囲は神聖な空気に包まれました。続いて、斎田の耕作者である「大田主(おおたぬし)」を務める石塚毅男さんが、伝統的な装束に身を包んで田へと足を踏み入れます。この大田主とは、神事に捧げるお米を育てる大役を担う責任者のことで、地域農業の象徴とも言える存在でしょう。
石塚さんが一株ずつ丁寧に鎌で刈り取った銘柄は、栃木県が誇る「とちぎの星」です。収穫されたばかりの稲穂は抜穂使によって入念に確認され、式場内に設けられた「稲実殿(いなみのどの)」と呼ばれる保管場所へ大切に納められました。SNS上では「地元の米が選ばれて誇らしい」「歴史的な瞬間に立ち会えて感動した」といった声が次々と投稿されており、地域住民の喜びと関心の高さがひしひしと伝わってきます。
西の地「主基」でも受け継がれる伝統の技と祈り
一方、西日本を代表する「主基(すき)」の地、京都府南丹市でも同様に歴史的な儀式が進行しました。こちらでは大田主の中川久夫さんが中心となり、京都の清らかな水と土で育まれた「キヌヒカリ」が収穫されています。抜穂の儀は、単なる農作業ではなく、自然の恵みに感謝し、次代へと命を繋ぐ精神的な意味が込められた神事です。中川さんが一文字ずつ刈り取る姿からは、長年培われた職人の矜持と、陛下へ捧げる至高の敬意が感じられました。
このように、東の悠紀、西の主基という対照的な二つの地から選ばれたお米は、11月の本番に向けて厳重に管理されます。筆者の視点から言えば、この行事は単なる宗教儀式を超え、日本の稲作文化の素晴らしさを再認識させてくれる貴重な機会だと感じます。最新の農業技術が進歩する一方で、こうした古式ゆかしい所作が守り抜かれている点に、日本文化の奥行きがあるのではないでしょうか。伝統が息づくこの瞬間こそ、私たちが次世代に伝えるべき宝物と言えます。
今回収穫された「とちぎの星」と「キヌヒカリ」は、いずれも食味が良く、非常に評価の高い品種です。これらが大嘗祭の舞台で供えられることは、生産者にとってもこの上ない名誉となるでしょう。2019年11月の本番に向け、日本中が祝賀ムードに包まれる中、私たちの主食である「お米」が持つ神聖な力について、改めて思いを馳せてみてはいかがでしょうか。全国から集まる期待とともに、代替わりの儀式はクライマックスへと向かっていきます。
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