2019年ノーベル化学賞決定!吉野彰氏が変えた「モバイル社会」の裏側とリチウムイオン電池の奇跡

2019年10月、世界が注目するノーベル賞の発表が行われ、自然科学3分野の受賞者がついに勢揃いしました。なかでも日本中を歓喜の渦に包んだのは、化学賞を受賞した旭化成名誉フェローの吉野彰氏です。スマートフォンや電気自動車の心臓部として欠かせない「リチウムイオン電池」の実用化に大きく貢献したその功績は、私たちの生活様式を根底から変えた革命と言っても過言ではありません。

SNS上では「吉野さん、本当におめでとうございます!」「スマホがこれだけ普及したのはこの発明のおかげ」といった感謝の声が溢れ、トレンドを独占する事態となりました。2018年の本庶佑氏に続き、日本人が2年連続で受賞した事実は、日本の科学技術力の高さを改めて世界に知らしめる誇らしい出来事となったでしょう。

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不可能を可能にした3人の賢者たち

今回の化学賞は、吉野氏のほかに米テキサス大学のジョン・グッドイナフ教授とニューヨーク州立大学のマイケル・スタンリー・ウィッティンガム教授が共同で受賞されました。リチウムイオン電池の歴史は1970年代まで遡りますが、当時は重い鉛蓄電池や、繰り返し使うと性能が落ちるニッカド電池が主流で、持ち運びには全く適さない時代だったのです。

まずウィッティンガム氏が、層状の結晶構造を持つ「層間化合物」というキーワードを見つけ出し、リチウムを用いた電池の原型を提示しました。しかし、当時は発火のリスクが拭えず、実用化の壁は極めて高いものでした。そこに現れたのがグッドイナフ氏で、彼は1980年に「コバルト酸リチウム」という画期的な正極材料を開発し、電池のポテンシャルを飛躍的に高めることに成功したのです。

大掃除で見つけた運命の論文と執念の実験

吉野彰氏の真骨頂は、バラバラだったパズルを完成させた「組み合わせの妙」にあります。1982年12月、研究が難航していた吉野氏は、研究室の大掃除中にある論文を偶然目にしました。それがグッドイナフ氏の発表した正極材料に関する内容だったのです。この出会いが運命を変え、負極に特殊な炭素材料を用いる現在のリチウムイオン電池の基本構造が、1985年に確立されました。

特筆すべきは、その徹底した安全性へのこだわりです。宮崎県にある工場で、釘を刺しても発火しないかという過酷な実験を繰り返し、1992年にようやく事業化の火が灯りました。自社での製品化にこだわらず、広く技術を普及させる道を選んだ旭化成の姿勢や、1991年に世界に先駆けて商品化したソニーの決断力も、このモバイル革命を語る上で欠かせないピースと言えます。

筆者の視点では、吉野氏が会見で語った「リチウムイオン電池の本当の姿はまだ誰も分かっていない」という言葉に深い感銘を受けました。完成された技術に見えても、なお謙虚に真理を追究する姿勢こそが、科学の原点ではないでしょうか。全固体電池などの次世代技術へ期待が膨らむ今、この受賞は終わりではなく、新たなエネルギー革命の幕開けに過ぎないと感じています。

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