回転寿司業界の盟主であるスシローグローバルホールディングス(HD)と、同業で業界5位に位置する元気寿司が、2019年6月18日、進めていた経営統合に向けた協議を白紙に戻すと発表しました。これにより、2017年から続いた資本業務提携も解消される見通しとなり、外食産業全体に大きな波紋を広げています。今回の統合断念の背景には、両社のブランド戦略における根本的な違いが浮き彫りになったことがあるようです。
この提携を主導してきたのは、元気寿司の親会社であり、コメ卸大手の神明ホールディングス(HD)でした。神明HDは、2017年にイギリスの投資ファンド、ペルミラから約379億円を投じて取得したスシロー株の大半を、2019年7月を目途に株式市場で売却し、出資比率を9.97%まで大きく引き下げる計画です。事実上、神明HDが両社の筆頭株主として目指していた巨大回転寿司チェーンの誕生は断念されました。
経営統合が白紙化された要因として最も強く指摘されているのは、両社の経営方針の違いが明確になったことです。特に元気寿司は、全席に高速レーンを導入し、寿司がレーンを「回転しない」という独自のスタイルを追求しており、ブランドイメージや店舗展開に強いこだわりを持っています。一方、スシロー側は、業界トップとしての地位と、その裏付けとなる絶好調の業績を背景に、単独での成長路線が得策だと判断したと思われます。
実際、スシローは2018年9月期に連結純利益79億円と過去最高益を達成し、わずか2年間で利益を2.5倍に伸ばすなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いでした。神明HDのもとで元気寿司との統合を進めるよりも、この勢いを活かして独自の経営を続けることが、より良い選択肢だと考えたのでしょう。この統合協議の断念と提携解消は、スシロー側の強い意向が反映された結果とされています。
そもそも、この資本提携は、スシロー株を売却したいペルミラ側が神明HDに話を持ちかけたことがきっかけでした。つまり、両社間に元々深い繋がりがあったわけではなく、資本の論理、すなわちお金の動きから始まった提携だったのです。当初は、統合によって規模の拡大を図り、食材の調達力強化やアジアを中心とする海外での共同展開などを目論んでいたので、今回の白紙化は、その目論見が外れた形となりました。
この報道を受けて、SNSでは「やっぱりね」「戦略が違いすぎた」「スシローは単独の方が強い」「元気寿司の独自路線は評価したい」といった声が多く見られ、多くの回転寿司ファンが今後の両社の動向に注目しています。特に元気寿司の個性的な「回転しないすし」のスタイルを評価する意見は多く、両社の個性がぶつかり合うことへの懸念は当初からあったことが伺えます。
コメ卸最大手・神明HDの戦略と誤算
今回の提携を主導した神明HDには、コメ卸最大手としての強い危機感がありました。国内のコメ消費量が先細りする中で、成長し続ける回転寿司市場は、数少ない有望な販路だと見込んでいたのでしょう。スシローと元気寿司を傘下に収めることで、コメ流通における国内シェアの拡大や、コメの安定的な供給元としての地位をさらに確固たるものにする戦略的な思惑があったと推察されます。
しかし、スシロー側の成長戦略と折り合いがつかず、その思惑は外れてしまいました。実は神明HDは、2013年にも元気寿司とかっぱ寿司を運営するカッパ・クリエイトとの経営統合を模索したものの、外食大手コロワイドによるカッパ買収によって、その計画が頓挫した経緯があります。今回もまた、業界再編の試みが失敗に終わってしまったわけです。
私見を述べさせていただくと、今回の統合白紙化は、単なる規模の追求だけでは乗り越えられない、各ブランドが持つ個性の重要性を浮き彫りにしたと言えるでしょう。特にスシローのように好調な企業にとって、シナジー効果が不透明な統合にリスクを負うよりも、独自の勝ち筋を追求する方が合理的であるという判断は、非常に理にかなっています。神明HDは、スシロー株の取得資金を借り入れで賄っていたため、今回の大半の株式売却によって借入金を返済し、本業の強化に注力するほうが得策であると判断した模様です。
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