旭化成が宮崎県延岡市周辺に構える、グループ最大の生産拠点において、歴史ある水力発電設備の大規模なリニューアルに乗り出します。小堀秀毅社長は2019年10月29日、日本経済新聞の取材に対し、2026年度までに数百億円という巨額の投資を行う方針を明らかにしました。この計画は、単なる設備の老朽化対策にとどまらず、発電能力を現状から約9%も引き上げるという野心的な試みです。
SNS上では、民間企業がこれほど大規模な自前の水力発電所を維持・強化している事実に驚きの声が上がっています。「旭化成がダムを持っているなんて知らなかった」「再生可能エネルギーへの投資として非常に具体的で好感が持てる」といった、企業の環境姿勢を高く評価する投稿が相次いでいるのです。地域に根ざしたインフラを磨き直す姿勢は、投資家からも熱い視線を浴びています。
環境債「グリーンボンド」で加速するGHG削減戦略
今回の改修プロジェクトは、2030年度までに売上高当たりの温室効果ガス(GHG)排出量を、2013年度比で35%削減するという同社の大きな目標を支える柱となります。GHGとは、二酸化炭素などの地球温暖化を招くガスの総称であり、その削減は今やグローバル企業の責務です。小堀社長は、この対策資金を調達するために、同社初となる「グリーンボンド」の発行を2020年度にも検討していると述べました。
グリーンボンドとは、再生可能エネルギーの導入など、環境問題の解決に資する事業に限定して資金を募る債券のことです。2020年度には200億円規模の発行が予定されており、これにより資金調達の透明性を高めつつ、環境への貢献を鮮明に打ち出す狙いがあるのでしょう。ESG投資が重視される現代において、こうした明確な資金使途の提示は、企業の信頼性を飛躍的に向上させる極めて有効な手段であると私は確信しています。
石炭火力を抑制し持続可能なモノづくりへ
宮崎県と熊本県の境を流れる五ヶ瀬川水系など、9カ所に分散する発電所のうち6カ所が順次更新される予定で、既に2019年夏には五ヶ瀬川発電所での工事が始まっています。延岡地区では衣料用の繊維や高機能樹脂など、私たちの生活に欠かせない素材が作られていますが、その電力の約3割が自前のクリーンな水力で賄われている点は特筆すべきでしょう。
改修完了後は、これまで頼ってきた石炭火力発電の稼働を抑制することで、年間約6.4万トンの二酸化炭素排出カットが見込まれています。火力から水力へと主軸を移すこの決断は、コスト面での挑戦も伴うはずですが、持続可能な製造業のあり方を提示する素晴らしいモデルケースです。一過性のブームに終わらせない旭化成の地道なインフラ投資こそが、真の脱炭素社会を切り拓く鍵になるのではないでしょうか。
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