2019年10月20日、福岡県の古賀ゴルフ・クラブで開催された「日本オープンゴルフ選手権」の最終日、ゴルフ界の歴史に刻まれる壮絶なドラマが誕生しました。首位と8打差という絶望的な状況からスタートしたチャン・キム選手が、誰もが予想しなかった圧巻のまくりを見せ、国内メジャー初優勝を飾ったのです。
プレーオフに備えていた練習場で自身の勝利を知った瞬間、彼はその場にしゃがみ込み、溢れ出す涙を止めることができませんでした。SNS上でも「この逆転劇は漫画のようだ」「不屈の精神に感動した」といった声が相次ぎ、彼の劇的な復活を祝福する投稿がタイムラインを埋め尽くしています。
怪我の苦しみを乗り越えた「飛ばし屋」の執念
今回の勝利は、彼にとって単なる1勝以上の重みがありました。昨シーズン、彼は腰や背中の激痛に加え、左手首も負傷するという、アスリートにとって致命的な状況に陥ったのです。1試合も出場できず、友人との交流すらままならないまま病院で過ごした孤独な日々は、想像を絶するものだったでしょう。
筆者は、今回の結果こそが彼の「攻めの姿勢」がもたらした必然だと確信しています。今季の平均飛距離319.57ヤードという圧倒的なパワーを武器に、難攻不落とされる古賀のコースを果敢に攻め立てる姿は、まさに王者の風格でした。保守的になりがちなメジャー大会で、ドライバーを振り抜く勇気が勝利を呼び込んだのです。
試合中、彼はあえて順位表(スコアボード)を確認しなかったといいます。18番ホールで沈めた値千金の7メートルバーディーパットも、その重要性を知らずに打ったからこそ、プレッシャーに打ち勝てたのかもしれません。こうした無欲な集中力こそが、84回を数える大会史上最大級の逆転劇を生んだ要因です。
世界へと羽ばたく「ナショナルオープン」覇者の称号
「ナショナルオープン」とは、その国のゴルフ協会が主催する国内最高峰の大会を指します。この名誉ある称号を手にしたことで、彼は賞金ランキングのトップに躍り出ました。石川遼選手や今平周吾選手といった強豪を抑えての首位浮上は、今後のツアーをさらに熱くさせること間違いありません。
この勝利により、2019年10月24日から開幕する米ツアー「ZOZO選手権」や、その後の世界選手権シリーズへの出場権も見事に勝ち取りました。一時は引退もよぎったであろう長いトンネルを抜け、満面の笑みを浮かべる彼の前には、再び世界への扉が大きく開かれています。
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