三井化学が、自動車業界で絶大な信頼を得ている潤滑油添加剤「ルーカント」の新たな可能性を切り拓こうとしています。2019年10月21日、同社はこれまで主戦場としてきたエンジンオイルなどの用途から一歩踏み出し、家電製品やOA機器に使用される樹脂の品質を高める「改質剤」としての販路拡大を表明しました。
世界経済の不透明感が増し、汎用素材の価格競争が激化する現代において、独自の技術力で勝負する姿勢は非常に賢明だと言えるでしょう。この戦略の核となるルーカントは、エチレンを原料とした炭化水素系の合成油であり、他社の追随を許さない三井化学独自の触媒技術によって生み出された高付加価値製品です。
摩耗を防ぎ熱に勝つ!ルーカントがもたらす樹脂の劇的進化
そもそも「改質剤」とは、プラスチックなどの素材に少量混ぜることで、元の材料にはない粘り強さや滑らかさを与える魔法のような成分を指します。ルーカントをABS樹脂などに配合すれば、部品同士がこすれ合う際の「摩耗」を劇的に抑えることが可能になり、製品そのものの寿命を延ばす耐久性が手に入ります。
さらに、工業用ホースなどに使われる合成ゴムに添加した場合には、熱による劣化を防ぐ「耐熱性」が向上するという素晴らしい副次効果も期待されています。SNS上では、日本の素材メーカーが持つ地味ながらも確実な技術力に対し、「縁の下の力持ちが世界を支えている」といった称賛の声が数多く寄せられているようです。
筆者の個人的な視点ではありますが、消費者が製品を長く大切に使うサステナブルな時代において、こうした「壊れにくさ」を支える技術こそが、真のブランド価値を生むのではないかと感じています。企業の利益追求だけでなく、社会全体の資源を守る一助となるこの取り組みには、大きな期待を寄せています。
2021年2月の新設備稼働で供給能力は倍増へ
三井化学は、2025年度までに非潤滑油用途の売上比率を3割まで引き上げるという野心的な目標を掲げています。この計画を支えるため、千葉県市原市の市原工場では新設備の建設が進められており、2021年2月の稼働を目指して着々と準備が整えられている最中です。
新設備が完成すれば、年間の生産能力は約4万トンと現在の2倍にまで拡大する見込みであり、供給体制の強化によって市場での存在感はさらに増すでしょう。2018年度比で営業利益を2.1倍にするという壮大なビジョンに向けた、この果敢な投資は、まさに同社の自信の表れと言っても過言ではありません。
革新的な技術が私たちの身近な家電をより高品質なものに変えていく様子は、まさに化学の醍醐味です。三井化学が描く新しい素材の地図が、今後の製造業にどのようなインパクトを与えるのか、私たちはその進化の過程を特等席で見守ることになるでしょう。
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