赤ちゃんの食事といえば「粉ミルクをお湯で溶かす」という光景が一般的でしたが、今、その常識が大きな転換期を迎えています。2019年11月25日現在、封を開けるだけでそのまま授乳できる「液体ミルク」への注目が、かつてないほど高まっているのです。先行する江崎グリコと明治の好調を受け、ついに業界大手の雪印メグミルクと森永乳業も商品化に向けて動き出しました。
この熱狂の背景には、2019年に日本列島を襲った相次ぐ大型台風があります。千葉県を直撃した台風15号や、広範囲に甚大な被害をもたらした台風19号の際、断水や停電に見舞われた家庭で、お湯を必要としない液体ミルクが「命を繋ぐ備蓄」として真価を発揮しました。SNS上でも「これがあったから救われた」という切実な声が広がり、認知度が一気に跳ね上がったのです。
災害時だけではない!共働き世代が熱視線を送る「時短」のメリット
液体ミルクの最大の利点は、調乳の手間が一切かからない点にあります。これまでの粉ミルクは、一度お湯を沸かし、計量して溶かし、さらに赤ちゃんが飲める温度まで冷ますという手順が必要でした。しかし液体ミルクなら、容器から哺乳瓶に移し替えるだけで完了します。この手軽さは、忙しい共働き世帯にとって、夜間の授乳や外出時の荷物を減らす画期的な解決策となりました。
現在、江崎グリコの紙パック製品や明治のボトル缶製品が市場を牽引していますが、2019年8月から10月にかけての売り上げは、台風の影響もあり当初想定の3倍という驚異的な数字を記録しています。ドラッグストアだけでなく、今ではコンビニエンスストアや高速道路のパーキングエリアでも見かけるようになり、インフラとしての普及が着実に進んでいると言えるでしょう。
欧州では市場の2割!日本でも期待される「授乳のダイバーシティ」
世界に目を向けると、フィンランドでは乳児用ミルクの約78%が液体タイプであるなど、欧州諸国では非常にポピュラーな存在です。日本でも製造基準を定めた法令が2018年夏に改正されたことで、ようやく普及の土壌が整いました。明治の予測では、将来的に国内市場の1割から2割を液体ミルクが占め、最大で60億円規模の市場に成長すると見込まれています。
雪印メグミルクの西尾啓治社長は、2020年度中の発売に向けて準備が整ったことを明かしており、森永乳業も前向きな検討を続けています。国内シェアの8割を握る大手4社が揃い踏みすれば、価格競争やさらなる技術革新が期待できるでしょう。現状では粉ミルクに比べて価格が約3倍と高めですが、普及が進めばより手に取りやすい価格帯になることが予想されます。
個人的な見解として、液体ミルクの普及は単なる利便性の向上に留まらず、社会全体の「育児の担い手」を広げる鍵になると確信しています。お湯を用意するハードルがなくなることで、父親や祖父母、さらには災害時の避難所スタッフなど、誰もが迷わず授乳に関われるようになるからです。2019年11月末には、容器に直接取り付けて飲める専用の吸い口(乳首)も発売される予定です。
今後は、賞味期限の延長やゴミの削減など解決すべき課題もありますが、液体ミルクは日本の育児環境をより豊かに、そして強固なものにしてくれるはずです。メーカー各社が競い合い、より安全で使いやすい製品が次々と登場する未来が、すぐそこまで来ています。私たち編集部も、子育て世帯に寄り添うこの新しい選択肢の広がりを、引き続き応援していきたいと考えています。
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