2019年6月20日付の日経BP専門誌の記事によると、大手電機メーカーのパナソニックでは、各社内カンパニーがそれぞれICT(情報通信技術)を駆使し、工場のスマート化を独自に進めているとのことです。なかでも、ノートパソコン「レッツノート」や業務用タブレット端末「タフブック」「タフパッド」といった法人向け製品を手掛けるコネクティッドソリューションズ(CNS)社の神戸工場(神戸市)は、その最前線に位置しています。同工場では、「一品一様」「人の経験に頼らない高品質」「トレーサビリティー(履歴の追跡)+予兆管理の進化」「納期短縮」という4つの重要課題を掲げ、スマート工場への変革を目指しているのです。
神戸工場で生産される製品群は、法人顧客の細かな要望に応じて仕様を柔軟にカスタマイズできることが大きな強みとなっています。モバイルソリューションズ事業部プロダクトセンター所長の清水実氏は、「顧客の要望が多様化している現在、いかに迅速に、そして柔軟にそれに対応するかが極めて重要になってきています」と強調しています。この多様なニーズへの対応、すなわち一品一様のモノづくりを実現する鍵として、協働ロボットの導入が積極的に進められています。
生産工程は、「電子部品実装」「ボード検査」「完成品組み立て」「機能検査」「包装」と大きく分かれますが、特に工程の上流にある「ボード検査」では、すでに2016年に双腕ロボットが導入されていました。具体的には、カワダロボティクス(東京・台東)製の双腕ロボット「NEXTAGE(ネクステージ)」が、電子回路基板であるワークのハンドリングを担当しています。このNEXTAGEは、実装工程から流れてきた基板のQRコードを読み取り、品種を自動で特定します。そして、その品種に合わせた動作プログラムに切り替えて、3台ある検査装置へ基板を正確にセットしていくのです。検査終了後も、装置から取り出して次の工程へ排出する一連の作業を担い、多様な品種への対応能力を発揮しています。
双腕ロボットであるNEXTAGEは、従来の単腕ロボットのように固定設置する必要がなく、専用の移動台車に載せて使用できる点も大きなメリットです。万一、装置トラブルなどが発生した場合でも、簡単に移動させて作業者と交代できる柔軟性が評価されています。また、神戸工場では、品種切り替えの頻度が少ないラインにおいて、従来型の単腕ロボットとNEXTAGEを組み合わせた自動化にも挑戦しています。検査工程と、検査後の基板を複数に分割したり不要な部分を排除したりする「ルーターカット工程」を一体化した生産セルを構築したのです。
このセルでは、NEXTAGEが検査装置へのセットや排出、ラベル貼りといった比較的複雑な作業を受け持ち、一方の単腕ロボットは基板分割機へのセットや取り出しなどの単純作業を担当しています。これにより、検査からルーターカットまでの一連の作業が自動化されました。この自動化の成果として、以前は日勤の2シフト体制だった検査工程が、24時間稼働可能になったといいます。さらに清水氏が指摘するように、「品質を守るためにも自動化は必要」なのです。人が手作業で行っていた頃は、作業中に誤って基板をぶつけてしまうなどのトラブルが避けられませんでしたが、自動化により、こうした品質を損なうリスクを根絶することが可能になりました。
従来、検査工程の一部を単腕ロボットに置き換えた時期もありましたが、単一品種にしか対応できず、品種変更のたびにプログラムの切り替えなどの設定変更が必要でした。双腕ロボットの導入は、この柔軟性の課題を解消し、自動化を飛躍的に進展させたと言えるでしょう。一方で、ほとんどが自動化されている部品実装工程に対し、細かなカスタマイズが多いため品質確保には人の手作業が不可欠とされる「完成品組み立て工程」は、依然として人による作業が中心となっています。
協働ロボット「UR3」導入で作業効率が向上
しかし、組み立て工程においても、可能な部分から自動化の試みが進められています。その最新の取り組みとして、2019年に導入されたばかりの協働ロボットを活用したワークのハンドリングが注目されます。具体的には、5インチ液晶パネル上に空気を吹き付けてゴミなどを除去する「クリーニング工程」において、デンマークのユニバーサルロボット社製「UR3」が、ワークを吹き付け装置にセットする作業を担っています。協働ロボットは、人と共同で作業を行うように設計されたロボットのことで、安全柵なしで人と同じ空間で作業できるのが特徴です。
UR3の導入により、人とワーク(液晶パネル)の接触機会が減少し、パネルへの汚れやゴミの付着防止に貢献しています。また、協働ロボットの特長を生かし、従来の生産ラインにほとんど改修を加えることなく設置が完了しました。従来1人で行っていた作業をUR3がハンドリングすることで、「タクトタイム(製品一つを完成させるまでの時間)のバランスが改善し、作業効率が高まりました」と清水氏は成果を述べています。神戸工場では今後、ビスのねじ締め作業など、適用可能な作業から順次協働ロボットへの置き換えを進めていく方針です。現時点での協働ロボットの能力では対応できる作業は限られていますが、それでも最大 20% 程度の生産効率向上が見込めると試算されているのです。
パナソニック神戸工場の挑戦は、日本の製造業が直面する人手不足や、顧客ニーズの多様化といった課題に対し、スマート工場化と協働ロボットの活用がいかに強力な解決策となり得るかを示していると言えるでしょう。特に、高いカスタマイズ性が求められる「一品一様」の生産現場で、人が担ってきた複雑な作業をロボットが担うことで品質を均一化し、かつ生産性を向上させるという取り組みは、製造業の未来を照らす光となるに違いありません。インターネット上のSNSでも、このニュースは「やっぱり日本の技術はすごい」「レッツノートのカスタマイズが速くなるのは嬉しい」といった、好意的な意見で話題を集めており、技術革新への期待の高さがうかがえます。今後、他の製造現場への横展開によって、日本の競争力がさらに高まることに期待したいと考えます。
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