気候変動という地球規模の課題に対して、私たちは今、大きな転換点を迎えています。モルガン・スタンレーMUFG証券が2019年11月27日に発表した最新のリポートによれば、温暖化を防ぐための支出は単なるコストではなく、極めて収益性の高い「投資」であると結論付けられました。環境保護と経済成長は相反するものと考えられがちですが、これからの時代はその両立こそが最大のビジネスチャンスになるでしょう。
国際的な枠組みである「パリ協定」が掲げる目標を達成するためには、今後30年間で温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする必要があります。この壮大な計画を実現するために必要な資金は、世界全体で約50兆ドル、日本円にして約5440兆円という天文学的な数字に上ると試算されました。これほど巨額の資金が動くとなれば、世界経済の構造そのものが劇的に塗り替えられることは間違いありません。
一見すると過大な負担に思えるこの投資ですが、実はそれ以上の莫大な恩恵を私たちにもたらしてくれます。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の推計を紐解くと、気温上昇を1.5度以内に抑えることで、災害の抑制や大気汚染の改善が進みます。その結果、世界全体で年間6.3兆ドルもの経済的メリットを享受できる見通しです。このリターンを考えれば、50兆ドルの投資はむしろ「割安」な買い物と言えるのではないでしょうか。
日本のエネルギー構造に激変の兆し
日本国内に目を向けると、このエネルギー転換には30年間で約1.7兆ドルの費用がかかると予測されています。しかし、この投資によって日本が得る果実は非常に甘いものです。現在、日本は年間18.5兆円もの巨費を投じて化石燃料を輸入していますが、再生可能エネルギーへの移行が進めば、この流出を大幅に食い止めることが可能になります。エネルギーの自給自足は、経済安全保障の観点からも極めて重要です。
民間企業の動きも加速しており、例えば川崎重工業は2020年から燃料電池に不可欠な液体水素の製造施設を発売する予定です。こうした技術革新は、単なる環境貢献にとどまらず、新しい産業の柱として期待されています。ロバート・A・フェルドマン氏が指摘するように、採算性の面から見ても、企業が脱炭素に取り組む動機は十分に揃っているのです。SNS上でも「これからは環境対策をしない企業こそが淘汰される」といった厳しい意見が飛び交っています。
私は、この50兆ドルの投資こそが「停滞する世界経済へのカンフル剤」になると確信しています。これまでの「我慢するエコ」から「稼ぐためのエコ」へとパラダイムシフトが起きた今、日本企業が持つ技術力が世界をリードする日は近いでしょう。脱炭素を単なる義務と捉えず、攻めの投資として活用できるかどうかが、これからの30年間の命運を分ける鍵となります。
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