日本の技術力の結晶が、ついに大きな一歩を踏み出しました。パナソニックとソニーという、かつての家電王国ニッポンを象徴する二社のDNAを受け継ぐ「JOLED(ジェイオーレッド)」が、石川県能美市に世界初となる印刷方式有機ELパネルの量産ラインを完成させたのです。
2019年11月28日に開催された式典にて、石橋義社長は「印刷方式で世界初の量産ラインが完成した」と力強く宣言しました。この工場はもともと、経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)の液晶工場だった場所を大改造して誕生した、いわば「日の丸液晶」の再起をかけた聖地でもあります。
韓国勢を迎え撃つ「印刷方式」の革新性とは
現在、有機EL市場は韓国メーカーが圧倒的なシェアを握っていますが、JOLEDが対抗策として掲げるのが独自の「印刷方式」です。これは、インクジェットプリンターのように、発光材料を基板に直接塗り分ける画期的な技術を指します。
従来の「蒸着方式」は、真空状態で材料を気化させて付着させるため、高価な部材や巨大な設備が必要でした。一方、印刷方式はよりシンプルな設備で製造できるため、製造コストを大幅に抑制できる可能性を秘めています。まさに、効率と柔軟性を兼ね備えた日本らしい職人芸のデジタル版といえるでしょう。
SNS上では「ついに国産の有機ELが本格始動か!」「ソニーやパナソニックの技術が形になるのは胸が熱くなる」といった期待の声が上がる一方で、「価格が安くなるならモニターを買い替えたい」という切実なユーザーの願望も見受けられました。
立ちはだかる「良品率」と「寿命」の壁
しかし、輝かしい船出の裏には険しい課題も横たわっています。最も大きな懸念点は、生産されたパネルのうち、製品として出荷できる基準を満たす割合を示す「良品率」がまだ低いという現状です。
韓国勢が8割以上の高い良品率を誇るなか、JOLEDの技術はまだ調整段階にあり、コスト競争力を十分に発揮できているとは言えません。また、専門家からは「画面の明るさと寿命の両立」が課題であるとの指摘も出ており、特に車載用など、過酷な環境で使われるパネルにおいては、さらなる信頼性の向上が不可欠です。
私個人の意見としては、単に「安さ」で競うのではなく、医療用モニターやトヨタのコンセプトカー「LQ」に採用されたような、日本が得意とする高品質・高付加価値なニッチ市場をどれだけ確保できるかが、生き残りの鍵を握ると考えています。
2025年に向けた5兆円市場への挑戦
2025年には、有機EL市場は5兆円規模にまで膨れ上がると予測されています。この巨大な波に乗るべく、JOLEDは自社生産だけでなく、海外メーカーへの技術供与というライセンスビジネスでの収益化も模索しています。
2019年3月期は259億円の赤字を計上しましたが、金融機関からの支援により、設備投資に必要な約1000億円の目処は立ちつつあります。今回の量産ライン稼働は、単なる工場の完成ではなく、日本のディスプレイ産業が世界で再び主役になれるかどうかの「正念場」の始まりなのです。
コメント