2019年07月17日現在、いよいよ開催まで約1年と迫った東京オリンピックへの期待が最高潮に達しています。2019年07月02日には観戦チケットの購入手続きが締め切られ、当選の喜びに浸る方も多いのではないでしょうか。しかし、その華やかな祭典の裏側で、ある「厳しいルール」がインターネット上で大きな議論を巻き起こしていることをご存じでしょうか。
それは、会場内で観客がスマートフォンなどを用いて撮影した「動画」を、SNSに投稿することが全面的に禁止されているという規約です。チケット購入時に同意が求められるこの条項には、現代のデジタル社会では考えられないような驚きの内容が含まれていました。せっかくの歴史的な瞬間を動画でシェアしたいと願うファンにとっては、少々耳の痛い話かもしれません。
自分たちの姿さえNG?動画投稿を拒む「第33条」の壁
具体的に規約の内容を紐解いてみましょう。チケット保有者は、会場内で写真や動画を撮影すること自体は認められていますが、その取り扱いには極めて厳格な制限が課せられています。規約の第33条によれば、撮影した動画や録音した音声に関する一切の権利は、なんと国際オリンピック委員会(IOC)に移転することに同意しなければならないと定められているのです。
ここで重要なのは、SNSへの投稿が禁じられているのは「競技シーン」だけではないという点です。観客席の熱気や、自分たちが楽しんでいる様子を映した「自撮り動画」であっても、IOCの事前の許可なくインターネット上に配信することは許されません。もしも悪質な規約違反とみなされた場合には、せっかく手に入れたチケットが無効化される恐れもあるというから驚きです。
この規約が判明すると、ネット上では瞬く間に困惑の声が広がりました。TwitterなどのSNSでは「厳しすぎて楽しめない」「感動を共有したいだけなのに」といった不満の声が続出しています。特に短い動画を気軽にシェアする「ストーリー機能」を日常的に使いこなす若い世代からは、時代に逆行しているのではないかという強い反発の意見も散見されました。
なぜ動画だけがダメなのか?巨額の「放映権」を守るための盾
大会組織委員会がここまで頑なに動画投稿を制限する背景には、「放映権(ほうえいけん)」という莫大なビジネスの存在があります。放映権とは、テレビ局などが大会の様子を独占的に放送できる権利のことです。組織委員会の説明によると、この放映権料は大会運営における極めて重要な収入源であり、その価値を保全しなければ大会の開催自体が危うくなってしまうといいます。
実際、2018年12月に公表された予算案を見ても、IOC負担金としての放映権料は約850億円にものぼり、収益の柱となっていることが分かります。誰もが高画質な動画を即座に世界中へ配信できるようになった今、観客による「非公式な中継」は、公式ライセンスを持つ放送局の利益を損なう脅威として捉えられているのが、スポーツ界の切実な実情なのでしょう。
異例の「著作権移転」が意味する法的強制力の強さ
今回の五輪規約で特に法曹界が注目しているのは、「著作権(ちょさくけん)」の扱いです。通常、撮影した写真や動画の著作権は、シャッターを切った本人に帰属します。しかし、五輪ではこの権利をあらかじめIOCへ「移転(譲渡)」させる契約を結ばせます。これにより、IOCは著作権者として、YouTubeなどのプラットフォームに対し直接的に動画の削除を要請できるようになるのです。
一般的なスポーツイベントでは、主催者が投稿者に削除をお願いするか、悪質な場合に訴訟を起こすという手間のかかる手順を踏みます。しかし、開催期間が限られている五輪では、スピード感が欠かせません。IOCに権利を集約させることで、規約違反のコンテンツを即座に排除できる法的な「武器」を持たせているわけですが、専門家からは「ファンの熱意を削ぎかねない」との懸念も示されています。
私自身の見解を述べさせていただくと、放映権ビジネスを守る論理は理解できるものの、やはり今のSNS全盛時代において、個人の思い出としての自撮り動画まで封じるのはいささか過剰な対応に思えてなりません。ファンの自発的な発信こそが大会を盛り上げる最高の起爆剤になるはずです。権利の保護と観客の楽しみをいかに共存させるか、主催者側にはさらなる柔軟な姿勢を期待したいところです。
2020年の本番を心から楽しむためにも、まずはこの規約を正しく理解しておくことが大切です。組織委員会には、何が許され、何が禁止されるのかを、より分かりやすく丁寧に周知していく責任があると言えるでしょう。写真の投稿は認められているため、今のところは静止画でその魅力を伝える準備をしておくのが、観客としての賢い選択となりそうです。
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