事務機器の代名詞とも言える名門、米ゼロックスが驚きの賭けに出ました。同社は2019年11月7日までに、パソコン・プリンター最大手の米HP(ヒューレット・パッカード)に対し、約3兆円規模の買収提案を行ったことを明らかにしました。
今回の動きは、まさに「小が大を呑む」という表現がふさわしいものです。ゼロックスの時価総額(企業の価値を株価と発行済み株式数で算出した総額)は約8900億円。対するHPは3兆円規模であり、自社の3倍以上の巨人を飲み込もうとする野心的な再編案と言えます。
このニュースに対し、SNS上では「ゼロックスの名前がまだこれほどの影響力を持っていたとは」「オフィス機器の時代が終わろうとする中での断末魔か、それとも逆襲か」といった、驚きと困惑が入り混じった反応が多数寄せられ、トレンドを賑わせています。
ペーパーレス化の荒波とGAFAの台頭が招いた「老舗の合流」
なぜ今、これほどの巨大買収が必要なのでしょうか。その背景には、世界的な「ペーパーレス化」という抗えない時代の流れがあります。プリンターや複合機の市場は年々縮小しており、単独での生き残りが極めて困難な状況に追い込まれているのです。
現在、世界の技術革新をリードしているのは、グーグルやアップルといった「GAFA」と呼ばれるメガテック企業たちです。かつてシリコンバレーの源流と呼ばれたゼロックスやHPが、かつての輝きを取り戻すには、規模を拡大してコストを削減し、収益力を高めるしか道がないのでしょう。
編集者の私見として、今回の買収劇は「生き残るための最終手段」だと感じます。富士フイルムHDとの買収合意を破棄してまで独立を選んだゼロックスですが、自らが主導権を握る形で業界を再編しなければ、明日は無いという強い危機感が伝わってきます。
日本企業への影響は?キヤノンや富士フイルムが迫られる戦略変更
この巨大再編の余波は、日本の事務機器メーカーにも確実に及びます。特にHPにレーザープリンターの基幹部品を供給しているキヤノンにとっては、調達ルートの変更などが起これば、年間5000億円を超える売上に影響が出る可能性も否定できません。
また、富士フイルムHD傘下の富士ゼロックスも、2021年以降のブランド戦略や製品供給体制において、難しい舵取りを迫られることになるでしょう。海の向こうで起きた「小が大を呑む」買収提案は、日本の製造業の再編を加速させる呼び水になるかもしれません。
2019年11月8日現在、HP側は検討を進める姿勢を見せていますが、市場には「買収額が大きすぎて資金調達が現実的か」という懐疑的な見方も残ります。かつてスティーブ・ジョブズにインスピレーションを与えた老舗企業が、再び世界の中心へ返り咲けるのか、その成否に注目が集まります。
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