2019年11月30日、世界の自動車業界を象徴する名門、ドイツのダイムラーが衝撃的な発表を行いました。同社は2019年11月29日、2022年までに全世界で少なくとも1万人規模の人員削減を実施することで労働組合側と合意したことを明らかにしました。かつてない自動車産業の変革期において、メルセデス・ベンツを擁する巨人が生き残りをかけた壮絶なリストラに踏み切ります。
SNS上では「ついにベンツの親会社までもが1万人削減か」「電気自動車への移行がいかに過酷か物語っている」といった、業界の先行きを不安視する声が相次いでいます。今回の削減対象は「間接部門」と呼ばれる、事務や管理などの非生産部門が中心となる見通しです。2018年末時点で約29万8000人を抱える巨大組織において、5ケタに及ぶ人員整理はまさに「断腸の思い」の決断と言えるでしょう。
なぜ今、リストラなのか?「電動化」の巨額投資と利益率のジレンマ
ダイムラーがこの厳しい選択を迫られた背景には、環境規制への対応という避けては通れない壁があります。ここで注目すべき「電動化(でんどうか)」という専門用語は、エンジン車から電気自動車(EV)などへシフトすることを指します。この開発には天文学的な投資が必要であり、その負担が同社の利益率を毎年1%も押し下げると予想されています。新車市場が停滞する中で、利益を確保するためにはコストカットが不可欠なのです。
一メディア編集者としての私の主張は、この決断は単なる「守り」ではなく、次世代の覇権を握るための「攻め」の再編であるということです。古い組織構造のままでは、テスラなどの新興勢力や、環境技術で先行するライバルに太刀打ちできません。ダイムラーは管理職の10%削減も含め、人件費を14億ユーロ(約1690億円)も圧縮する計画ですが、これは未来のクルマ作りへリソースを集中させるための苦渋の選択なのでしょう。
「強制解雇なし」の約束。希望退職と採用抑制で挑むソフトな人員整理
ドイツ国内においては「2029年まで無理な解雇は行わない」という労働組合との約束が守られています。そのため、今回の1万人削減は、強引なクビ切りではなく「希望退職」の募集や「採用抑制(新しい人を雇わないこと)」によって進められる予定です。また、有期雇用契約の更新を控えるほか、時短勤務の拡大など、従業員の生活を守りつつ段階的に組織をスリム化する手法が取られるでしょう。
2019年11月30日の現在、自動車業界は100年に1度と言われる大変革期「CASE」の真っ只中にいます。2020年から2021年にかけての業績は一段と厳しくなると予測されており、ダイムラーの今回の動きは他メーカーにも波及する可能性が高いはずです。伝統あるブランドが、どのように「重厚長大」な組織を脱ぎ捨てて、軽やかなデジタル・電動化企業へと生まれ変わるのか。私たちは今、その歴史的な転換点を目撃しているのです。
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