日本の鉄鋼商社として確固たる地位を築くJFE商事が、世界経済の要所である北米市場で新たな一歩を踏み出しました。織田直祐社長によれば、ここ3年間にわたり課題となっていた海外事業の立て直しが、2019年11月15日現在、着実に実を結びつつあるようです。特に北米は、かつての川鉄商事時代に買収したVEST社を起点とする、同社にとって非常に歴史の深い拠点として知られています。
近年の北米市場では、アジア諸国から流入する安価な鋼管との激しい価格競争が続いてきました。これに対抗するため、JFE商事は設備の増強や生産プロセスの効率化を徹底し、製品ラインナップの拡充を図ってきたのです。SNS上でも「日本の技術力が北米のインフラを支えている」といった期待の声が上がる一方で、現地の厳しい市場環境を懸念するシビアな意見も散見され、注目度の高さが伺えます。
成長の鍵を握る「電磁鋼板」と不透明な市場環境
JFE商事が鋼管と並んで注力しているのが「電磁鋼板(でんじこうばん)」です。これは、電気を磁気に変える特性を持つ特殊な鋼板で、モーターや変圧器の鉄心に使用されます。今後、自動車の電動化(EVシフト)や送電網の整備が加速するなかで、この高機能素材の需要は飛躍的に高まると予想されるでしょう。まさに、次世代のクリーンエネルギー社会を根底から支える、戦略的なキーデバイスと言えます。
しかし、足元の情勢は決して楽観視できるものではありません。トランプ政権による輸入関税の発動後、高騰を続けてきた米国内の鋼材価格は、現在の下落局面を迎えています。さらに、頼みの綱である自動車需要も減速の兆しを見せている状況です。その影響もあり、2020年3月期の事業利益は320億円と、前年同期と比べて11%ほどの減益となる厳しい見通しが示されました。
現地主導の「企画力」で海外利益比率5割を目指す
JFE商事は、2021年3月期までの中期経営計画において、海外事業が占める利益の割合を従来の3割から5割弱へと大幅に引き上げる目標を掲げています。北米だけでなく、東南アジアを含めた全世界的な鋼材需要の冷え込みが懸念されるなか、日本からの指示を待つのではなく、現地で迅速に意思決定を行う「企画機能の強化」が急務となっているのです。
今回の北米統括会社の設立は、まさにその決意の表れだと私は確信しています。市場の最前線で調達ルートを多角化し、有力な買収先を自ら発掘する姿勢こそ、真のグローバル企業への脱皮に不可欠です。変動の激しい国際情勢において、現場主義を貫く同社の挑戦がどのような果実をもたらすのか。始動したばかりの米持ち株会社の采配から、今後も目が離せそうにありません。
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