自動車業界に100年に一度と言われる大変革の波が押し寄せる中、トヨタグループの中核を担うアイシン精機が大きな決断を下しました。2019年11月15日、同社は子会社であり自動変速機(AT)で世界シェアトップを誇るアイシン・エィ・ダブリュ(AW)と、2021年4月1日に経営統合することを発表したのです。
このニュースに対し、SNSでは「ついにこの2社が一つになるのか」「巨大組織の再編で競争力がどう変わるか楽しみだ」といった、期待と驚きが入り混じった声が数多く寄せられています。今回の統合は、次世代の車社会を象徴するキーワード「CASE」への対応を急ぐための、まさに背水の陣とも言える戦略的な一手と言えるでしょう。
ここでCASEという言葉について触れておきます。これは「Connected(接続)」「Autonomous(自動運転)」「Shared & Services(共有)」「Electric(電動化)」の頭文字を取った造語です。特に電動化が進めば、これまで主力だったガソリン車向けの変速機は、その役割が大きく変化したり、需要が減少したりすることが避けられません。
「親子逆転」の解消とガバナンスの強化へ
アイシンAWは、2005年にATの年間販売台数で500万台を突破して以来、世界首位の座を走り続けてきました。2018年度の業績を見ても、売上高は1兆6800億円と親会社のアイシン精機に匹敵し、営業利益に至っては1036億円と、親会社を大きく上回る「親子逆転現象」が続いていたのです。
圧倒的な実績を背景に、アイシンAWは強い独立心を持って事業を推進してきました。しかし、その勢いゆえにグループ全体としての統制が難しく、管理部門の重複による無駄や、コンプライアンス(法令遵守)の徹底、いわゆるガバナンスの欠如といった課題も浮き彫りになっていたのが実情です。
今回の統合によって、重複していた組織をスリム化し、2023年度には年間300億円ものコスト削減を目指す計画です。私自身の見解としても、バラバラだったリソースを一つに集約することは、研究開発費が高騰する現代において、生存のために避けては通れない賢明な判断だと感じています。
中国市場の減速をバネにする新製品開発
統合を急がせた背景には、市場環境の急激な変化も存在します。2018年12月に岐阜県瑞浪市で新工場を稼働させたばかりですが、最大市場である中国での景気減速により、ATの販売に急ブレーキがかかっています。2019年度の販売予測は前年度比7%減の925万台と、厳しい現実に直面しているのです。
しかし、この危機感こそが最強の原動力となります。アイシンはこれまでも、2019年4月に手動変速機のアイシン・エーアイを統合し、同年10月には車載ソフト開発会社を整理するなど、伊勢清貴社長の強力なリーダーシップのもとで組織改革を加速させてきました。
今後は、培ってきた世界最高峰の変速機技術をベースに、電気自動車(EV)向けの駆動装置といった次世代製品の開発へ一気に舵を切ることでしょう。盤石な経営基盤を構築し、世界中のライバルと渡り合う準備は整いつつあります。新生アイシンが、未来のモビリティ社会をどう彩っていくのか、目が離せません。
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