2019年11月12日に発表された最新の文芸単行本ランキングでは、まさに「百花繚乱」と呼ぶにふさわしい多彩な顔ぶれが揃いました。トーハン調べによるこのデータを見ると、現代の読者が何を求め、どのような物語に心を寄せているのかが鮮明に浮かび上がってきます。肌寒くなってきたこの季節、家でじっくりとページをめくりたくなるような珠玉の作品たちが、書店を賑わせているようです。
今回の首位に輝いたのは、愛七ひろ先生による『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』の第18巻です。いわゆる「なろう系」と呼ばれる、Web小説投稿サイトから人気に火がついた作品が、単行本の市場でも圧倒的な強さを見せつけています。SNS上でも「新刊を待っていた」「安定の面白さ」といったファンからの熱いコメントが溢れており、その勢いは留まることを知りません。
「なろう系」から直木賞作家の最新作まで混戦のランキング
ここで少し専門用語の解説を挟みますと、「なろう系」とは日本最大級の小説投稿サイト「小説家になろう」から誕生した作品群を指す言葉です。多くの場合、現実世界の主人公が魔法のある異世界へと転生し、そこでの冒険や生活を楽しむ姿が描かれます。今やこのジャンルは、10位にランクインした『転生したらスライムだった件』も含め、エンターテインメントの主流として確固たる地位を築いたといえるでしょう。
一方で、実力派作家による深みのある人間ドラマも根強い人気を誇っています。2位には辻村深月先生の『ツナグ 想い人の心得』が登場しました。死者との再会を仲介する「ツナグ」という存在を通して、人々の絆を描く本作は、多くの読者の涙を誘っています。続く3位には、又吉直樹先生が放つ待望の長編『人間』がランクインし、芥川賞作家としての筆致の鋭さが改めて注目を集めているところです。
4位から10位にかけても、恩田陸先生や湊かなえ先生、米澤穂信先生といった、現在の文学界を牽引する豪華な執筆陣が名前を連ねました。特に湊かなえ先生の『落日』は、過去の凄惨な事件を掘り起こすミステリーとして話題を呼び、SNSでは「一気に読み進めた」「読後の余韻が凄い」と、その緊迫感のある物語に圧倒される読者が続出しています。
私個人の見解としては、現在の読書トレンドは「日常からの脱却」と「人間関係への深い洞察」という二極化が進んでいるように感じます。アニメ化もされているライトノベル作品が上位を席巻する一方で、又吉先生や村田沙耶香先生のような独特の感性を持つ作家が支持される現状は、現代人が抱える多面的な知的好奇心の表れではないでしょうか。どの作品も、今の時代を映し出す鏡のような役割を果たしているのです。
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