2019年11月13日、スポーツ小売大手であるゼビオホールディングスの中村和彦執行役員が、中間決算の場でなんとも複雑な心境を漏らしました。その視線の先にあったのは、ゴルフ界の新たなヒロインとして一世を風靡している「シブコ」こと渋野日向子選手です。
同年8月の「AIG全英女子オープン」で見事な優勝を飾り、日本中を熱狂の渦に巻き込んだ彼女の影響力は絶大でした。特に彼女が愛用するピン(PING)の「G410 PLUS ドライバー」は、飛距離性能と安定性を両立したモデルとして、アマチュアゴルファーの間で爆発的なヒットを記録しています。
SNS上でも「シブコと同じクラブが欲しい!」「店頭から在庫が消えている」といった驚きの声が相次ぎ、まさに社会現象と言える盛り上がりを見せていました。しかし、これほどの強力な追い風が吹いているにもかかわらず、同社の経営陣が手放しで喜べない深刻な事態が進行していたのです。
記録的な販売を阻んだのは「天候」という見えない敵
中村執行役員が「渋い顔」を見せた最大の要因は、2019年の夏から秋にかけて続いた異例の天候不順にあります。週末を直撃する台風や長引く長雨は、ゴルフを楽しむための絶好の機会を奪い、結果として高価格帯であるゴルフウェアなどの衣料品販売に深刻なダメージを与えてしまいました。
「シブコ効果」によるクラブの売上は好調を維持したものの、利益率の高い衣料品の不振がその利益を相殺してしまったわけです。経営の観点から見れば、どんなに輝かしいスターが誕生しても、屋外スポーツという性質上、自然の猛威には抗えないという厳しい現実を突きつけられた形となりました。
筆者の個人的な見解としては、スポーツ業界における「個人のスター性」と「気象リスク」の対比が浮き彫りになった興味深い局面だと感じています。一つのギアが売れるだけでなく、業界全体を支えるためには、天候に左右されないライフスタイル提案や、屋内施設の充実も重要になるでしょう。
それでも、中村氏は「スター選手の出現は大歓迎である」と、未来への期待を力強く語っています。渋野選手がもたらしたゴルフへの関心は一過性のものではなく、次世代のプレイヤーを育成する大きな種火となるはずです。逆境の中、ゴルフ界のさらなる躍進を期待せずにはいられません。
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