2019年11月13日、私たちは大きな転換点に立っています。日本経済新聞社が10月中旬に都内で開催した「超高齢化社会の課題を解決するための国際会議」では、国内外の英知が結集し、人口減少という荒波を乗り越えるための熱い議論が交わされました。
慶應義塾大学の前塾長であり、現在は日本私立学校振興・共済事業団の理事長を務める清家篤氏は、この会議で驚くべきビジョンを提示しました。世界に類を見ない速度で高齢化が進む日本において、シニア世代の「活力」こそが、社会を再起動させる鍵になるというのです。
75歳以上の急増が意味する「社会の支え手」の重要性
清家氏は、2015年には1対1だった「65〜74歳」と「75歳以上」の比率が、2025年には2対3にまで変化すると指摘します。いわゆる「団塊の世代」が後期高齢者となることで、介護ニーズが爆発的に高まることは避けられません。
しかし、これを悲観的に捉える必要はないというのが清家氏の持論です。SNSでも「今のシニアは元気すぎる」という声が溢れているように、日本の60代前半男性の8割以上が働く意欲を持っています。これはフランスの3割という数字と比較しても圧倒的なポテンシャルです。
シニアを単なる「支えられる側」と見るのは、もう時代遅れかもしれません。労働者、消費者、さらには投資家や地域活動のリーダーとして、社会の多様な側面で活躍してもらうことが、マクロ経済の成長を制約させないための最善策といえるでしょう。
「職業寿命」を延ばすための壁!定年制と年功序列の終焉
2040年には労働力人口が5500万人を割り込むと予測されるなか、清家氏は「60代後半の労働力率を70%超まで引き上げるべきだ」と提言します。そのために克服すべき最大の障壁が、多くの日本企業に根付く「定年退職制度」です。
多くの企業がいまだに60歳定年を維持していますが、年金の受給開始年齢が引き上げられるなかで、このギャップを埋めることは急務です。また、年齢とともに賃金が上がる「年功序列」も見直しが避けられません。働きに見合った公正な報酬体系への移行が必要です。
さらに、働くと年金がカットされる「在職老齢年金」についても、就労意欲を削ぐ要因として警鐘を鳴らしています。私は、制度が個人の「働きたい」という純粋な意欲を邪魔する現状は、一刻も早く改善されるべきだと強く感じます。
金融ジェロントロジーが守る高齢者の資産と未来
最後に注目したいのが「金融ジェロントロジー(金融老年学)」です。これは、加齢に伴う認知機能の変化が経済活動に与える影響を研究する学問です。高齢者が持つ多額の金融資産が、判断力の低下によって「塩漬け」になることは、経済全体にとって大きな損失です。
「一律に投資を制限するのではなく、医師と金融機関が連携して個別に判断するルールを作るべきだ」という清家氏の提案は、非常に画期的です。年齢で一括りにせず、個人の能力を尊重する仕組みこそが、真の「アクティブ・エイジング」を実現するはずです。
人生経験豊かなシニアが、民生委員などの地域活動で知恵を振るい、経済の担い手としても輝き続ける。そんな日本が実現すれば、世界中の国々が私たちの背中を追いかけることになるでしょう。超高齢社会は、決して日本の終焉ではなく、新しい黄金時代の幕開けなのです。
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