全国各地で宿泊施設を展開するワシントンホテルが、2019年11月14日に注目の決算発表を行いました。2019年10月の株式上場後、記念すべき最初の報告となった2019年4月1日から2019年9月30日までの連結業績は、売上高が109億円、営業利益が15億円という結果になっています。前年比で見ると増収を確保した一方で、利益面ではやや苦戦を強いられる形となりましたが、そこには業界特有の事情と、次なる成長への布石が隠されているようです。
今回の決算における「営業利益」とは、本業であるホテルの宿泊・サービス提供から得られた儲けを指します。同社の説明によれば、売上高は2%の微増となったものの、営業利益は10%の減少を記録しました。SNS上では、上場直後の決算ということもあり投資家の間で「台風や人件費の影響は無視できない」といった冷静な分析や、「応援したいホテルブランドなので頑張ってほしい」といった温かなエールが入り混じり、大きな話題を呼んでいます。
天候不順と社会情勢が落とした影、それでも進む「攻め」の姿勢
好調な新規出店が追い風となり売上を伸ばした一方で、利益が目減りした背景には複数の要因が存在します。まず、2019年8月以降に日本列島を襲った度重なる台風の影響で、一時的に利用客が減少したことが挙げられるでしょう。さらに、人手不足に伴う人件費の高騰がコストを押し上げました。内田和男社長は記者会見の席で、宿泊施設が乱立する供給過多の状態に加え、日韓関係の悪化による訪日客の動向も無視できない要因であったと振り返っています。
しかし、ワシントンホテルは決して守りに入っているわけではありません。2022年3月には、北海道札幌市内に「ワシントンホテルプラザ」を新たに開業する計画を明らかにしました。実は、同ブランドとしての新規出店は実に22年ぶりという大きな決断です。これまでは機能的なシングルルームが主流でしたが、今後は観光やビジネスの多様なニーズに応えるべく、2名以上で利用可能な客室を備えたモデルへとシフトし、地の利を最大限に活かす戦略です。
未来を見据えた改装投資と、編集者が読み解く「ホテルの価値」
2020年3月31日までの通期連結業績予想については、売上高222億円、営業利益25億円とする当初の計画を維持しました。株式公開に関連する諸費用や、施設の競争力を高めるための改装費用が一時的に重なるため「増収減益」となる見込みですが、これは将来に向けた前向きな投資と捉えることができるでしょう。効率性を重視した「R&Bホテル」との両輪で、変化の激しい宿泊市場をどのように勝ち抜いていくのか、その手腕に期待がかかります。
筆者の個人的な視点ですが、ホテルの供給過多が叫ばれる今こそ、ブランドの信頼性が問われていると感じます。単に寝る場所を提供するだけでなく、22年ぶりの新規ブランド展開で「家族やグループ」もターゲットに加える同社の挑戦は、非常に理にかなった選択ではないでしょうか。一時的な減益を恐れず、老朽化対策や上場というステップを踏んだワシントンホテルが、数年後に札幌の地でどのような新しい景色を見せてくれるのか、非常に楽しみでなりません。
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