2019年6月20日の終値で、日経アジア300指数が前日比1.6パーセント高の1320.59ポイントを記録し、約1カ月半ぶりとなる高値を付けました。これは、5月8日以来の記録的な水準に達したことになります。この力強い株価上昇の背景には、主に二つの大きな要因が挙げられます。一つは、主要20カ国・地域首脳会議、いわゆるG20サミットでの米中首脳会談が実現するとの見込みが高まり、長らく市場の重しとなっていた両国の貿易摩擦に対する懸念が大きく後退したことです。もう一つは、米国や欧州、そして中国の中央銀行が、さらなる金融緩和を拡大するのではないかという観測が強まり、新興国市場への投資資金流入の期待が高まった点にあるでしょう。
このアジア株の復調ぶりは、直近の安値であった5月29日を起点として分析すると、特に米中摩擦の直接的な当事国である中国の主要銘柄の株価が顕著に伸びていることが分かります。例えば、大手インターネットサービス企業の騰訊控股(テンセント)の株価は10パーセントも上昇し、中国平安保険をはじめとする保険関連銘柄も同じく約10パーセント高となりました。これは、貿易摩擦の影響を受けやすいハイテク産業だけでなく、内需に関連する企業にも明るい見通しが広がっている証拠ではないでしょうか。
大和証券の山田雪乃シニアストラテジストも指摘しているように、この株価上昇の波は、特に輸出依存度が高いハイテク企業における買い戻しの動きを強く反映しているようです。具体的には、世界的な半導体メーカーである韓国のサムスン電子の株価も9パーセント高と大幅に上昇しました。ここでいう買い戻しとは、株価下落を見越して事前に空売りしていた投資家が、損失確定や利益確定のために再び株式を買い戻す行為を指し、この行動自体が株価をさらに押し上げる要因となることがあります。
また、米国が中国に対して発動を検討していた「第4弾」の制裁関税について、米アップルの主力製品である「iPhone」も対象に含まれると見られていましたが、その発動が見送られるのではないかという観測が市場に広がり、関連企業にも大きな好影響を与えました。例えば、半導体受託製造の世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)や、スマートフォンなどの金属筐体を手掛ける可成科技(キャッチャー・テクノロジー)といったアップル関連銘柄においても、同様に積極的な買い戻しが進んだと伝えられています。
金融緩和の期待と新興国市場への影響
今回の株価上昇において、金融緩和の期待感は非常に重要な要素です。中央銀行が金利を引き下げたり、市場への資金供給を増やしたりする金融緩和は、企業の資金調達コストを下げ、経済活動を刺激する効果があります。特に、米欧など先進国の中央銀行が金融緩和に前向きな姿勢を示すことで、より高いリターンを求める世界の投資資金が、成長性の高い新興国市場、すなわちアジア市場へと向かう傾向が強まるでしょう。この資金の流れこそが、アジア株全体の強力な支援材料となっているのです。
このような市場の動きを編集者として見ると、米中間の貿易摩擦という不確実性が一時的にでも緩和に向かう可能性が見えたこと、そして世界的な金融緩和のトレンドが新興国市場を押し上げていることは、アジア経済にとって極めてポジティブな兆候であると考えられます。市場の懸念が和らぎ、資金が流入することで、アジアの企業は再び成長のアクセルを踏み込むことができるでしょう。もちろん、米中間の根本的な問題が解決したわけではないため、今後の動向には引き続き注視が必要ですが、2019年6月21日現在の市場の楽観的な雰囲気は、アジア経済の底堅さを示すものであり、私はこの前向きな変化を心から歓迎するものです。
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