愛知県西尾市で、中学2年生だった大河内清輝君が自ら尊い命を絶ってから、2019年11月27日で四半世紀となる25年を迎えます。当時13歳だった彼が残した遺書には、同級生からの執拗な金銭要求や暴力の実態が克明に綴られていました。この悲劇をきっかけに、彼が通っていた西尾市立東部中学校では、生徒たちが自発的に立ち上がり、いじめをなくすための組織「ハートコンタクト」を結成したのです。
2019年11月14日、同校の体育館では「いじめを考える集会」が開催されました。この集会は、ハートコンタクトに所属する約50名の生徒が中心となり、運営されています。今回、彼らは全校生徒に「いじめは世の中からなくせるのか」という、答えのない、しかし向き合わなければならない重い問いを投げかけました。SNS上でも「当事者である子供たちが真剣に議論することに意味がある」といった共感の声が広がっています。
集会で行われたアンケート結果によると、嫌なことをされている友人を見て「何もできなかった」と回答した生徒が、3年生で19%、2年生では44%に上りました。この「傍観者」になってしまう心の弱さを認め、生徒同士で本音をぶつけ合う議論が展開されたのです。「いつか必ずなくせる」と希望を語る生徒もいれば、「いじめの境界線は曖昧で、完全になくすのは困難」と冷静に現状を分析する声も上がりました。
ここで注目すべきは、彼らが「いじめ」という言葉を安易に使わず、相手の気持ちに寄り添おうとしている点です。いじめとは、身体的な攻撃だけでなく、心理的な苦痛を与える行為全般を指します。生徒たちが、自分自身の弱さを見つめ直すことが解決への第一歩だと結論づけた姿には、編集部としても深い感銘を受けました。教育現場に任せきりにせず、生徒自身が主体的に動くことこそが、未来を変える唯一の鍵ではないでしょうか。
集会には、清輝君の父である祥晴さんも参加されました。全国で悩む子供たちの相談に乗り続けてきた祥晴さんは、25年経ってもいじめが絶えない現状に悲しみを滲ませつつも、力強いメッセージを生徒たちに送りました。彼が語ったのは、かつての加害者が反省して被害者と親友になったという実体験です。祥晴さんの「人は変われる、変えていける」という確信に満ちた言葉は、これからの時代を生きる若者たちへの大きな励ましとなりました。
文部科学省の調査では、2018年度のいじめ認知件数は過去最多の約54万件を記録しています。数字だけを見れば絶望的に思えるかもしれませんが、東部中学校には、違和感を覚えた段階ですぐに声を上げられる「素地」が育っています。大人が子供たちの小さなサインをどれだけ真摯に受け止められるかが、今改めて問われています。清輝君の命日を前に、私たち一人ひとりが「自分にできること」を再考するべきではないでしょうか。
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