沖縄の大自然に抱かれた恩納村から、世界の科学界を揺るがす挑戦が始まっています。世界最高水準の研究を誇る沖縄科学技術大学院大学、通称「OIST」が、研究環境をさらに飛躍させるため、米国での本格的な資金調達に乗り出しました。
2019年11月14日、在米の科学者たちが中心となり、寄付金の受け皿となる「OIST財団」の設立が発表されます。寄付文化が深く根付いている米国において、企業や個人から広く支援を募ることで、国境を越えたイノベーションの加速を目指す狙いがあるようです。
ワシントンの日本大使公邸で同日開催される式典には、日米の政財界や科学技術の関係者が一堂に会します。ニューヨークを拠点とするこの非営利団体は、2018年に産声を上げ、2019年7月には正式な団体認定を受け、いよいよ本格的な活動を開始することになりました。
財団の舵取りを担うのは、投資コンサルタントの上島剛氏です。さらに理事には、元カリフォルニア州政府高官のジュリー・メイヤー・ライト氏や、沖縄出身で国立天文台ハワイ観測所に務める嘉数悠子氏など、国際色豊かで多彩な顔ぶれが名を連ねています。
SNS上では「日本の大学が米国で直接資金を集めるのは画期的だ」「沖縄からノーベル賞級の研究がもっと生まれてほしい」といった期待の声が寄せられています。まずは2019年末までに1000万円の寄付を目標に掲げ、着実な一歩を刻んでいく方針です。
ピーター・グルース学長は、かつてドイツの研究組織を率いた際、わずか2年間で約400億円もの寄付を集めた実績を持つ「資金調達のプロ」でもあります。「魅力を伝えることで、支援の輪は必ず広がる」と語る彼の言葉には、並々ならぬ決意が感じられるでしょう。
今回の財団設立には、実務面で大きなメリットが存在します。一般的に、米国の居住者が国外の機関へ寄付をしても税控除は受けられません。しかし、この財団を経由することで、米国内の税制優遇措置である「税控除」を適用できるようになるのです。
集まった貴重な資金は、米国研究者との交流促進や、未来を担う女性・若手研究者の育成、そして最先端分野の研究加速に充てられます。寄付者が自らの関心に合わせて、脳科学や物理学といった特定の研究分野を指定できる仕組みも、大きな魅力といえます。
OISTは2019年度に約200億円の政府予算を投じられ、論文の質の高さを競う世界ランキングでは、東京大学を抑えて国内首位、世界9位という驚異的な実績を叩き出しました。こうした「知の力」こそが、投資を呼び込む最大の武器となるに違いありません。
一方で、運営費の9割を公的資金に依存している現状に対し、政府からは「高コスト体質」との厳しい指摘も受けています。自立的な発展のためには、今回のような外部資金の獲得が、大学の未来を左右する極めて重要なミッションになると私は考えます。
2012年に創設されたOISTは、全学生の8割、教員の6割を外国人が占める、まさに日本の中の「異世界」です。教員数を現在の4倍以上に増やす野心的な計画を背景に、沖縄が世界の科学技術のハブとなる日は、そう遠くない未来に訪れるのではないでしょうか。
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