2019年11月28日現在、世界経済はアメリカと中国によるハイテク分野の覇権争いに揺れています。特に通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)に対するアメリカの厳しい制裁措置は、今後のビジネスシーンを大きく変えるのではないかと注目を集めているところです。しかし、ハーバード大学の名誉教授であり、知日派としても名高いエズラ・ボーゲル氏は、こうした国家間の分断(デカップリング)を「現実的ではない」と一蹴しています。
ボーゲル氏が指摘するのは、政府の規制を軽々と飛び越えていくグローバル企業の凄まじい「適応力」です。かつて日本企業が市場の選択を迫られた際、ダミー会社を設立することで中国と台湾の両方と巧みに取引を継続した歴史を例に挙げ、企業は常に政府の監視が及ばない「抜け道」を見つけ出す存在であると説いています。こうした商魂たくましい動きこそが、経済の本質と言えるのかもしれません。
巨大な資金力とAI技術を武器に世界を席巻する中国企業の底力
SNS上では「制裁で中国の勢いが削がれるのでは」という声も聞かれますが、現地の視点は異なります。ファーウェイは人工知能(AI)などの先端分野で着実に実績を積み上げており、14億人という膨大な国内市場に裏打ちされた潤沢な資金力を誇っています。また、アリババ集団に代表される小売・流通の進化も目覚ましく、今や中国勢は日米欧が足並みを揃えて立ち向かわなければならないほどの強敵へと成長を遂げました。
特に興味深いのは自動運転技術を巡る争いです。民主主義のアメリカに対し、共産党政権が強力な主導権を握る中国では、鉄道インフラなどの巨大事業を強引かつ迅速に進める強みがあります。一方で、過度な締め付けは優秀な人材の海外流出を招くというリスクも抱えているようです。国家がどこまで民間の活力をコントロールできるのか、その限界点を見極めることが今後の中国経済を占う鍵となるでしょう。
日本企業に追い風?歴史と文化の深い繋がりがもたらすアドバンテージ
これからの中国展開において、日本企業には独自の勝ち筋が見えています。ボーゲル氏によれば、日本企業は経営の重要ポストを自国籍の人材で固める傾向があり、情報漏洩のリスクを最小限に抑えられている点は大きな強みです。また、成都や西安といった内陸部への進出を支える総合商社のネットワークも、他国には真似できない貴重な資産といえます。
日本と中国の間には、長い年月をかけて育まれた歴史的・文化的な土壌が存在します。この深い繋がりがあるからこそ、日本はアメリカよりも有利な立場でビジネスを展開できる可能性を秘めているのです。編集者の視点から見ても、地政学的な対立を単なる障壁と捉えるのではなく、こうした日本独自の「信頼のインフラ」をどう活用するかが、これからの生き残り戦略として極めて重要になると確信しています。
最後に、10年後の世界を見据えるならば「インド」の動向を無視することはできません。中国と同じ規模の人口を抱え、ソフトウェア開発に秀でたインドが台頭することで、勢力図はさらに複雑化するでしょう。中国がインドとどのような関係を築くのか、あるいは日米欧がインドと手を組むのか。世界経済のダイナミズムは、私たちの想像を遥かに超えるスピードで、2019年の今も動き続けているのです。
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