欧州連合(EU)新体制始動!フォンデアライエン新委員長が挑む「拡大」と「結束」の分水嶺

2019年12月1日、欧州連合(EU)は新たな時代の幕開けを迎えます。欧州議会による人事案の承認を経て、ウルスラ・フォンデアライエン氏が女性初の欧州委員会委員長として正式に就任することとなりました。この欧州委員会とは、EUの政策執行を担う、いわば「政府」のような重要な役割を果たす機関です。しかし、新体制の船出を祝うムードの一方で、足元ではEUの存在意義を揺るがす大きな試練が待ち構えています。

最大の焦点となっているのは、バルカン半島の北マケドニアとアルバニアに対する「加盟交渉」の開始を巡る対立です。SNS上では「EUの拡大は欧州の安定に不可欠だ」という期待の声がある一方で、「拙速な拡大は治安や雇用の悪化を招く」といった慎重な意見も飛び交い、議論は白熱しています。今回の新体制発足は、イギリスの離脱という歴史的な「縮小」を経験する中で、組織をどう立て直すかが問われる極めて重要な局面なのです。

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マクロン大統領の「ノン」が突きつけた拡大への障壁

2019年10月のEU首脳会議において、拡大路線の前に立ちはだかったのはフランスのマクロン大統領でした。マクロン氏は、候補国の汚職対策が不十分であることなどを理由に、加盟交渉の開始に断固として反対の意を表明したのです。さらに2019年11月に入ると、フランスは新規加盟のハードルを一段と引き上げる改革案を提示しました。これは、自国内で台頭する右派勢力への配慮が背景にあると分析されています。

一般的に、EUに新しい国が加わると、経済格差を利用した移民や難民の移動が活発化する傾向にあります。フランスやオランダ、デンマークといった国々が慎重な姿勢を崩さないのは、こうした人口流入が自国の治安や雇用環境を脅かすのではないかという、国民の根強い不安を敏感に察知しているからでしょう。統合の理想を掲げる一方で、現実的な国内問題との板挟みにあう各国指導者の苦悩が、鮮明に浮き彫りとなっています。

ドイツとの足並みと新委員長に課せられた「調整」の重責

その一方で、ドイツを筆頭とする多くの加盟国は、バルカン諸国の加盟交渉入りを支持しています。2019年11月19日の会合ではフランスの改革案が退けられ、イタリアなど6カ国は2020年3月までの交渉開始を強く求める書簡を送りました。ここで鍵を握るのが、新委員長となるフォンデアライエン氏の存在です。彼女はドイツ出身でありながらフランス語を自在に操り、マクロン氏とも極めて近い関係を築いています。

私は、今回の対立は単なる「拡大の是非」ではなく、EUという組織が今後どのような価値観を優先すべきかという「哲学のぶつかり合い」だと感じています。マクロン氏が求める厳格な改革も一理ありますが、安易に門戸を閉ざせばバルカン諸国がロシアや中国の影響下に置かれるリスクも否定できません。新委員長には、各国のナショナリズム(国家主義)をなだめつつ、共通の利益を見出すという、針の穴を通すような調整能力が求められるでしょう。

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