2019年も終盤に差し掛かる中、瀬戸内海の観光シーンに大きな変革の波が訪れています。先日閉幕した「瀬戸内国際芸術祭2019」は、過去最多となる117万人の来場者を記録し、まさに「SETOUCHI」の名を世界に轟かせました。しかし、3年に一度の祭典が終わった後に訪れる「空白の1000日」をいかに彩るかが、地域の次なる課題となっています。この課題を解決すべく、旅行大手JTBが2019年11月28日から画期的な新サービスを始動させました。
今回スタートした「瀬戸内アイランド・コンシェルジュ・サービス」は、点在する島々の魅力を一本の線でつなぐ司令塔のような役割を果たします。JTB高松支店が中心となり、交通から宿泊、食事までを一括で手配するこの仕組みは、旅行会社にとって待望の窓口となるでしょう。SNS上では「瀬戸芸がない時期も島に行きたかったから嬉しい」「チャーター船で自由に移動できるのは夢のよう」といった期待の声が早くも上がっており、観光客の熱視線が注がれています。
移動の壁を打破する高級クルーズの魅力
瀬戸内観光の最大の壁は、島と島を結ぶ移動手段にありました。これまでの定期航路は生活を支えるためのものが多く、島を横断的に巡るには不便な側面があったのです。新サービスでは、瀬戸内アイランドクルーズなどの専門業者と提携し、ベッドやキッチンを完備した贅沢なクルーザーを用意しました。これにより、決められた時刻表に縛られることなく、プライベートな空間で優雅に海を渡る「洋上の旅」が、ついに現実のものとなります。
また、案内役を担うのは、瀬戸芸の運営を支えてきたNPO法人「瀬戸内こえびネットワーク」の皆さんです。島を知り尽くした彼らがガイドを務めることで、単なる観光地の見学にとどまらない、深い文化体験が可能になるでしょう。1日あたりの利用料は15万から20万円前後が想定されており、自分たちだけの特別なルートをカスタマイズできる自由度は、他では味わえない大きな魅力と言えます。
JTBは今後、海外の富裕層、いわゆる「ラグジュアリー層」をターゲットにした高付加価値なツアーを提案していく方針です。例えば、小豆島での水上飛行機体験や、JR四国が誇る観光列車「四国まんなか千年ものがたり」との連動など、空・海・陸を横断する壮大なプランが検討されています。こうした取り組みは、単なる移動手段の提供ではなく、瀬戸内というフィールドを世界最高峰のデスティネーションへ昇華させる挑戦でもあります。
アートの残り香と未来への展望
瀬戸内国際芸術祭の会期が終わっても、直島にある草間弥生氏の「赤かぼちゃ」をはじめ、島々には永続的に展示されているアート作品が数多く存在します。さらに、小豆島のオリーブ産業や各地の伝統的な食文化など、アート以外のポテンシャルも計り知れません。インバウンド(訪日外国人客)が来場者の2割を超える今、世界基準のサービスを提供することは、地域経済を維持し、交流人口を拡大させるための不可欠なピースとなるはずです。
筆者の視点としては、このプロジェクトが成功する鍵は「特別感」と「継続性」の両立にあると考えます。イベント頼みの観光から、質の高い日常を提供する観光へシフトすることは、日本の地方創生における重要なモデルケースになるでしょう。2020年度には個人がネットで予約できるシステムも構築される予定とのことで、誰もが自分らしい島旅をデザインできる時代が、すぐそこまで来ていることを実感せずにはいられません。
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