2019年11月25日、青森県八戸市にある八戸工業大学にて、伝統芸能と最先端技術が融合する歴史的な瞬間が訪れました。この日開催された公開授業では、国際的に活躍するピアニストの佐藤慎悟氏が登場し、なんと「津軽じょんがら節」をピアノで奏でるという驚きのパフォーマンスを披露したのです。これまで不可能に近いとされてきたこの試みは、会場に集まった学生ら約150人の心を一瞬で掴みました。
一般的に、津軽三味線の旋律は師匠から弟子へと直接伝えられる「口伝」が基本であり、楽譜が存在しない独特の世界です。今回、この難題に挑んだのが同大学の小坂谷寿一教授でした。先生は2009年から10年もの歳月をかけて、三味線の音を解析し、自動で楽譜に書き起こす「自動採譜装置」の研究を続けてこられたそうです。長年の情熱が実を結び、ついに世界で初めてピアノによる「じょんがら節」の演奏が実現しました。
AIが伝統の技を五線譜へ!自動採譜が拓く音楽の未来
この画期的な装置の仕組みは、実に興味深いものです。まず、3本の弦にマイクロホンを内蔵した特別な「エレキ三味線」を用いて、熟練の奏者である松田隆行氏が演奏を行います。その音をAI(人工知能)を搭載したコンピューターが取り込み、複雑な音の要素とノイズを精密に仕分けながら解析していくのです。この「自動採譜」とは、耳で聞いた音を瞬時に五線譜などの楽譜に変換する技術を指します。
SNS上では、このニュースに対して「三味線の魂がピアノでどう表現されるのか聴いてみたい」「伝統がテクノロジーで守られるのは素晴らしい」といった、期待に満ちた声が次々と上がっています。五線譜が作成できるようになったことで、三味線という邦楽の枠を超え、ピアノなどの西洋楽器とのアンサンブルも自由自在になるでしょう。音楽のジャンルを越えた新しいコラボレーションが、ここから次々に誕生するに違いありません。
私個人としても、後継者不足が叫ばれる伝統芸能の世界において、こうしたデジタルアーカイブの構築は希望の光だと確信しています。数値化が難しい「粋」な音を、精度の高いデータとして保存することは、次世代の育成を強力にバックアップするはずです。技術が伝統を壊すのではなく、むしろ守り、広めるための杖となる。八戸工業大学のこの成果は、文化継承の新しい形を私たちに示してくれているのではないでしょうか。
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