インド洋に浮かぶ戦略的要衝、スリランカ。2019年11月16日に投開票が行われた大統領選挙において、野党の有力候補であるゴタバヤ・ラジャパクサ元国防次官が、見事に過半数の得票を獲得して勝利を収めました。70歳の新リーダーは11月17日、自身のツイッターを通じて「大統領として国を導く機会を得られたことに深く感謝する」と高らかに勝利を宣言し、新たな時代の幕開けを印象づけています。
この勝利の報を受け、SNS上では「強力なリーダーシップによる治安回復」を期待する声が上がる一方で、過去の強権的な政治手法を懸念する意見も飛び交うなど、国民の反応は大きく二分されているようです。2019年11月18日の就任式を皮切りに、彼は一体どのような国づくりを進めていくのでしょうか。特に注目を集めているのが、かつて大統領を務めた実兄、マヒンダ・ラジャパクサ氏を首相に起用するという人事方針です。
親中派の復活がもたらす地政学的な変化
新大統領が兄のマヒンダ氏を首相に据えようとする動きは、スリランカの外交方針が再び「親中路線」へと大きく舵を切る可能性を示唆しています。マヒンダ政権下では、中国からの巨額融資によってインフラ整備が進んだ半面、返済が滞り港の運営権を譲渡する「債務の罠」という言葉が世界的に注目されました。今回の政権交代により、インド洋における中国の影響力が再び増大することは、周辺諸国にとっても無視できない事態となるでしょう。
個人的な見解を述べさせていただきますと、経済再建を急ぐ新大統領にとって、中国の資金力は抗いがたい魅力に見えるはずです。しかし、真に国民の利益を守るためには、特定の国に過度に依存するのではなく、透明性の高い持続可能な経済成長のモデルを構築することが不可欠ではないでしょうか。今回の選挙結果は、スリランカの主権と国際的なパワーバランスを天秤にかける、極めて重要なターニングポイントになると考えられます。
複雑な憲法制度が阻むスムーズな政権移行
新政権にとって最大の障壁となりそうなのが、現職のウィクラマシンハ首相との関係性です。2015年の憲法改正により、大統領には首相を罷免する権限がなくなりました。これは権力の集中を防ぐための措置ですが、大統領と首相の考えが対立する場合、国政が停滞するリスクを孕んでいます。閣僚の任命にも首相の同意が必要なため、新大統領が思い描く「ラジャパクサ兄弟による統治」を早期に実現するのは、一筋縄ではいきません。
現状では、ウィクラマシンハ氏が自ら辞任するか、議会が解散されない限り、現体制が続く可能性が残されています。議会の解散には、前回選挙から4年半が経過する2020年2月まで待つか、議員の3分の2の賛成を得る必要があります。2020年12月までに予定されている次期議会選挙まで、この「ねじれ状態」が解消されない恐れもあり、新大統領がどのようにして政治的な主導権を握るのか、その手腕が厳しく問われることになるでしょう。
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