2019年11月、日本の歴史に刻まれた深い爪痕を癒やすための大きな一歩が踏み出されました。かつて「らい菌」という細菌によって引き起こされる感染症、ハンセン病に対して行われた国の誤った政策により、多くの家族が筆舌に尽くしがたい苦難を強いられてきたのです。このほど成立した新法では、元患者の家族に対し、親や配偶者、子供には180万円、兄弟や同居家族には130万円の補償金が支払われることになりました。
ハンセン病は本来、感染力が極めて弱く、治療薬も確立されている病気です。しかし日本では、1907年から約90年もの長きにわたり、患者を強制的に隔離する政策が続けられてきました。この行き過ぎた隔離が、病気への正しい理解を妨げ、社会に根深い差別と偏見を植え付けてしまった事実は否定できません。2001年に元患者への謝罪と補償は行われましたが、その陰で家族への救済は、今日まで長く置き去りにされてきたのが実情です。
SNS上では「ようやく救済の道が開かれた」「遅すぎたが、家族の苦労が認められて良かった」という声が上がる一方、「金銭だけで心の傷は癒えない」といった複雑な思いも交錯しています。実際に家族が受けてきた被害は、単なる経済的損失に留まりません。地域社会からの村八分や就職の拒否、そして結婚の破談など、人生のあらゆる局面で理不尽な不利益を被ってきました。これを熊本地裁は「人生被害」という重い言葉で表現したのです。
救済の実効性と社会全体に問われる心の変革
2019年6月の地裁判決を受け、国は控訴を断念し、今回の議員立法による迅速な法整備に至りました。法律の前文には、国会と政府による深い反省とお詫びが明記されています。補償の範囲も判決より広がり、原告以外の約2万4千人が対象となる見込みです。支給総額は約400億円に上りますが、私は単なる金額の多寡ではなく、国が自らの非を正式に認め、家族に寄り添う姿勢を示したこと自体に、極めて重要な意義があると考えています。
しかし、法律ができただけで全てが解決するわけではありません。現在もなお、多くの家族が偏見を恐れて出自を隠し、声を上げられずにいます。事実、訴訟の原告団ですら実名を公表できたのはごく僅かでした。厚生労働省には、プライバシーを厳守し、誰一人が取り残されることなく安心して申請できる柔軟な窓口体制を整えることが強く求められます。制度の形骸化を防ぐため、実効性のある運用を注視していく必要があるでしょう。
本当の意味での解決は、私たち一人ひとりの心の中に宿る「見えない壁」を取り払うことから始まります。名誉回復のための基本法も改正され、啓発活動の対象に家族が加わりました。学校教育などの現場で、かつての過ちを正しく伝えていく教育が不可欠です。過去の出来事として片付けるのではなく、今を生きる私たちの課題として、この差別の歴史に誠実に向き合うときです。誰もが誇りを持って生きられる社会を、今こそ共に築いていきましょう。
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