「あなたがこの世で見たいと願う変化に、あなた自身がなりなさい」。インド独立の父、ガンジーが遺したこの力強い言葉を胸に、株式会社ポピンズホールディングスの会長、中村紀子氏は保育業界に立ちはだかる厚い壁に挑み続けてきました。2019年11月13日、これまでの歩みを振り返る連載の締めくくりとして、彼女が辿り着いた「幸福の本質」が語られています。
長年、行政による強固な規制、いわゆる「岩盤規制」との闘いに身を置いてきた中村氏。それは想像を絶する疲弊と虚無感との隣り合わせだったといいます。そんな彼女を救ったのは、アメリカの絵本作家、ターシャ・テューダーの生き方でした。50代で農家へ移住し、92歳でこの世を去るまで自然を愛したターシャの姿は、多くの現代人の心に響く「究極の丁寧な暮らし」としてSNSでも度々話題にのぼります。
ターシャが遺した「人生に不幸になっている暇なんてない」という言葉に、中村氏はどれほど救われたことでしょう。自分らしく生きることは、決して楽な道ではありません。中村氏は、幸せとは空から降ってくる幸運ではなく、自らの努力と忍耐で掴み取るものだと断言します。この力強い幸福論には、キャリアに悩む多くの女性層から「勇気をもらった」という共感の声が寄せられています。
次世代へ繋ぐバトンと新たな社会貢献への挑戦
2018年04月に社長の座を娘の麻衣子氏へ譲ったことで、中村氏の心には新たな余裕が生まれました。現在は、深刻化する児童虐待や貧困問題に対して、より深い慈しみの目を向けています。その活動の一環として、アメリカのカーネギーホールと提携した「ララバイプロジェクト」を日本で始動させる予定です。これは、困難な状況にある母親がアーティストと共に子守歌を作るという、音楽を通じた心の支援活動です。
プライベートでは、お孫さんたちから「ノンタン」と呼ばれ、いたずらに翻弄される穏やかな日常を楽しまれています。かつて戦士のように社会と戦ってきた女性が、今では「過去のすべてに感謝している」と微笑む姿は、非常に感慨深いものがあります。彼女が現在進めている、ゲストを肉じゃがでもてなす温泉施設「天空の家」の構想からも、その充実ぶりが伺えるでしょう。
筆者の視点から見ても、中村氏の生き方は「強さ」と「しなやかさ」の理想的な融合だと感じます。仕事に邁進する時期を経て、ターシャのように自然や家族を慈しむ境地に達することは、全ての働く人々にとって一つのゴールと言えるのではないでしょうか。自らの手で幸せを勝ち取ってきた彼女だからこそ、その言葉には、未来を切り拓くための本物の重みが宿っています。
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