フィリピンのマニラに本拠を置くアジア開発銀行(ADB)において、2019年12月02日、大きな人事の決定が下されました。日本政府が自信を持って推薦した前財務官の浅川雅嗣氏が、加盟する全68カ国・地域からの熱烈な支持を受け、次期総裁として全会一致で選出されたのです。
今回の選挙は浅川氏以外に立候補者が現れなかったため、実質的にはその手腕を問う信任投票のような形となりました。しかし、この「無風」の状態こそが、国際金融界における浅川氏の圧倒的な評価と、日本のリーダーシップに対する信頼の厚さを物語っているのではないでしょうか。
浅川氏は現在、内閣官房参与として活躍されていますが、2020年01月17日付で正式に総裁の椅子へ座ることになります。1966年にこの銀行が設立されて以来、なんと10代連続で日本人がトップを務めることになり、まさに日本の経済外交における金看板を守り抜いた形です。
ここで「アジア開発銀行」という組織について少し解説しましょう。これは、アジア・太平洋地域における貧困をなくし、健全な経済成長を支援するために設立された多国間公的金融機関です。道路や発電所といったインフラ整備の資金を貸し付ける、いわば地域の守護神のような存在といえます。
SNS上では、このニュースに対して「さすが国際金融のプロフェッショナルだ」と称賛の声が上がる一方で、「日本人が独占し続けることへのプレッシャーも大きいのではないか」といった、冷静かつ期待の入り混じった意見が数多く飛び交っています。
中尾体制からの継承と浅川氏に課せられた使命
浅川氏の任期は、退任する現職の中尾武彦氏が残した期間を引き継ぐ形となるため、2021年11月までとなっています。短い期間ではありますが、国際金融の最前線で培われた鋭い感性と、G20などの国際会議で磨かれた交渉力が存分に発揮されることは間違いありません。
編集者としての私の視点では、今回の就任は単なる「指定席」の確保ではありません。台頭する中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)との共存や差別化など、これまでにない高度な舵取りが求められる極めて重要なタイミングでの登板だと確信しています。
財務官時代には、緻密な論理と温厚な人柄で世界各国の要人と信頼を築いてきた浅川氏です。彼が描く新しいアジアのグランドデザインが、どのような色で彩られていくのか、世界中がその第一歩を注視しています。
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