【メキシコ経済が危機】左派政権発足から1年、理想と現実の狭間で揺れるロペスオブラドール大統領の苦悩

メキシコで左派のロペスオブラドール政権が誕生してから、2019年12月1日でちょうど1年という節目を迎えました。かつては高い支持率を誇った新政権ですが、現在は大きな岐路に立たされています。かつての成長を支えた「対外開放」や「民間重視」という看板を降ろし、独自の政策を強行した結果、皮肉にも経済の歯車が狂い始めているのです。

2019年11月26日、地元メディアの紙面には「景気後退」というショッキングな見出しが並びました。2018年10月から12月期以降、3四半期連続でマイナス成長を記録したことが公式に裏付けられたからです。中央銀行も2019年の成長予測を大幅に下方修正しており、これはリーマンショックの影響を受けた2009年以来の低水準になると予測されています。

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「脱・新自由主義」が招いた投資家たちの戸惑い

ロペスオブラドール大統領は、自由な競争を重んじる「新自由主義」こそが、メキシコにはびこる汚職と格差の根源であると断じています。その強い信念のもと、前政権が進めていた首都の新空港建設を中止するなど、大規模なプロジェクトを次々と白紙に戻しました。しかし、この強引な方針転換が民間企業の投資意欲を冷え込ませてしまったのは否定できません。

さらに異例なのは、大統領が一度も外遊を行っていない点です。2019年6月に大阪で開催されたG20サミットや、9月の国連総会さえも欠席しました。内政を優先する姿勢は、隣国アメリカのトランプ大統領との関係性にも不透明感を与えています。こうした「内向き」な姿勢は、SNS上でも「鎖国に近い」「経済外交を放棄している」といった厳しい声が上がっています。

経済の低迷は、市民の生活にも深刻な影を落としています。2019年1月から9月の間に、失業を理由に年金基金を切り崩した人は145万人にも上り、前年同期と比べて14%も増加しました。さらに、新車販売台数も8%落ち込むなど、消費の冷え込みは顕著です。こうした治安と経済の悪化を受け、支持率は2月の67.1%から50%台へと急落しています。

日本企業への影響と再生へのわずかな光

メキシコには、自動車産業を中心に1100社を超える日本企業が進出しています。この数字はイギリスやブラジルを上回る規模であり、メキシコ経済の失速は我々日本人にとっても決して他人事ではありません。投資家の信頼を回復できなければ、日本企業の活動にも甚大な影響が及ぶでしょう。まさに今、政権の真価が問われる正念場と言えます。

一方で、政権もようやく危機感を抱き始めたようです。総額8590億ペソに及ぶインフラ計画を発表するなど、民間企業に歩み寄る柔軟な姿勢を見せ始めています。格付け会社からも「計画が実行されれば改善の余地がある」との声が出ており、どん底からの回復を期待する向きもあります。理想を掲げるだけでなく、いかに現実的な解を見出すかが今後の鍵となるはずです。

個人的な見解を述べれば、格差是正という大統領の志は尊いものですが、経済の土台を壊しては元も子もありません。国家運営には「清廉さ」と同じくらい「予見可能性」が重要です。投資家が安心して資金を投じられる安定したルール作りこそが、メキシコ国民を救う最短ルートではないでしょうか。今後の政権による劇的な軌道修正に期待したいところです。

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