ドイツ経済が「テクニカル・リセッション」を間一髪で回避!自動車大国の苦悩と財政出動の行方

欧州の経済を力強く牽引してきた「一人勝ち」のドイツが、今まさに薄氷を踏むような局面に立たされています。ドイツ連邦統計庁が2019年11月14日に発表した7~9月期の国内総生産(GDP)は、物価変動を除いた実質ベースで前期比0.1%増となりました。わずかなプラスではありますが、これによって最悪の事態はひとまず免れた形です。

市場がもっとも懸念していたのは、2四半期連続でマイナス成長が続く「テクニカル・リセッション(景気後退)」への突入でした。4~6月期がマイナスだったため、今回も振るわなければ定義上の景気後退とみなされます。SNS上でも「ドイツが沈めば欧州が終わる」といった悲観的な声が目立っていましたが、今回の発表で首の皮一枚つながったと言えるでしょう。

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自動車産業を襲う「負の連鎖」と貿易摩擦の影

かつての勢いが失われた背景には、米中貿易戦争という世界的な荒波があります。ドイツの輸出依存度はGDPの47%と極めて高く、日本の18%と比較してもいかに外需に依存しているかが分かります。世界の荷動きが鈍れば、そのダメージをダイレクトに受けてしまう宿命にあるのです。特に屋台骨である自動車産業の落ち込みは深刻なレベルに達しています。

2019年1月から10月にかけての自動車生産は前年同期比で9%も減少しました。中国市場の停滞に加え、ディーゼル車への執着が仇となり、電気自動車(EV)などの環境対応で後手に回ったことが響いています。これを受けてコンチネンタルが約2万人の人員削減を発表するなど、製造業の現場では生き残りをかけたリストラの嵐が吹き荒れているのが現状です。

ここで言う「サプライチェーン」とは、部品の調達から製造、販売までをつなぐ供給網のことです。ドイツの自動車産業はこの網を欧州全域に張り巡らせているため、ドイツの不振は周辺国の成長をも止めてしまう「負の連鎖」を引き起こしかねません。実際、隣国ポーランドの銀行経営者からも、ドイツ減速の影響を危惧する切実な声が上がり始めています。

慎重なメルケル政権と「財政出動」を巡る攻防

景気を下支えしているのは、東西統一後で最低水準という驚異的な「失業率」の低さです。雇用が安定しているからこそ、個人消費が製造業の弱さをカバーできているのです。しかし、製造業の不況が長引けば、いずれサービス業や雇用にも悪影響が及ぶのは時間の問題でしょう。そこで焦点となるのが、政府が税金を投入して景気を刺激する「財政出動」の是非です。

欧州中央銀行(ECB)などは、財政に余裕があるドイツがもっと積極的にお金を使うべきだと主張しています。対してメルケル政権のショルツ財務相は「すでに十分な投資を行っている」と慎重な姿勢を崩していません。2021年には旧東独支援の「連帯税」縮小による減税も控えていますが、民間からは「今すぐ法人減税を行うべきだ」との声も噴出しています。

個人的な見解を述べれば、ドイツ政府は「財政黒字」という規律に固執しすぎている印象を受けます。現在の超低金利、あるいはマイナス金利の環境下であれば、将来の成長への投資として大胆に資金を投じる絶好の機会のはずです。自動車産業の構造転換を支援し、デジタル化やインフラ整備を加速させることが、結果として欧州全体の安定に寄与するのではないでしょうか。

2019年の成長率見通しは0.5%と、まさに「低空飛行」そのものです。メルケル政権は「真の危機」が来れば動くと約束していますが、その決断が遅れれば、雇用市場という最後の砦が崩れてしまうリスクも孕んでいます。ドイツ経済が再び力強く羽ばたくのか、それとも長期停滞の入り口に立つのか、2020年に向けた政府の舵取りから目が離せません。

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