2019年12月02日、日本企業はいよいよ「SDGs経営元年」というべき大きな転換点を迎えています。貧困や環境破壊といった地球規模の難題に対し、ビジネスを通じて解決を試みる動きが本格化しているのです。もはやSDGsを無視することは、事業の継続を危うくするリスクでしかありません。しかし、それ以上に重要な視点は、これが企業にとって空前の成長チャンスであるという事実でしょう。
SDGsとは、2030年までに国際社会が達成を目指す17の目標と169のターゲットを指します。SNSでは「意識高い系の言葉」と揶揄されることもありましたが、今やその認識は一変しました。企業が描く「未来のかたち」へ向けて、革新的な技術やサービスを生み出すための共通言語となっているのです。実際に、先進的な取り組みを行う企業を評価する土壌が、消費者や投資家の間で急速に育っています。
世界をリードする欧米企業の破壊的なイノベーション
世界の潮流をリードするのは、やはり欧米のグローバル企業です。例えば英蘭ユニリーバは、2025年までにプラスチック使用量を半減させるという野心的な目標を掲げ、全ての事業を社会課題の解決に直結させています。また、エネルギー大手の英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルは、役員の報酬を二酸化炭素の削減実績と連動させる仕組みを導入しました。これは単なる慈善活動ではなく、生き残りをかけた経営戦略なのです。
SDGsの達成によって生まれる経済価値は、年間で約12兆ドル、日本円にして約1300兆円にものぼると試算されています。米国のアウトドアブランドであるパタゴニアのように、環境配慮をブランドの核に据えることで熱烈な支持を集める成功例も増えてきました。現代は、従来の「所有」に固執するビジネスモデルから、効率的に資源を分かち合う「シェアリング経済」へと、パラダイムシフトが起きている時代だといえるでしょう。
金融市場が求めるESG投資の加速と日本の課題
企業の背中を強く押しているのは、金融市場からの熱い視線です。投資の世界では今、「ESG」がキーワードとなっています。これは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字を取ったもので、財務諸表には現れない企業の健全性を測る指標です。投資家たちは、これらの要素に優れた企業こそが長期的に高い付加価値を生み出すと確信し、積極的に資本を投じています。
2019年5月に実施された「SDGs経営調査」の結果を見ても、SDGsへの取り組みが手厚い企業ほど、経営効率が高く市場評価も優れていることが判明しました。一方で、世界と比較した際の日本企業の影の薄さは否定できません。日本株が長らく低迷している一因も、こうした新しい評価軸への適応の遅れにあるのかもしれません。日本企業には、自らの強みを世界へ発信する積極的な情報開示が求められています。
「三方よし」の精神で切り拓く日本発のSDGs
現在、欧州では環境に良い経済活動を定義する「タクソノミー」という分類作業が進んでいます。また、気候変動が財務に与える影響を開示する「TCFD」への対応も不可欠となっています。こうした国際的なルール作りに日本も深く関与していく必要があるでしょう。かつて近江商人が唱えた「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」という精神は、まさにSDGsの根幹に通じる日本独自の哲学です。
私は、SDGsとはこの「三方よし」に「未来の世代」という時間軸を加えた、究極の経営指標だと考えています。2019年12月02日現在のこの熱狂を、一過性のブームで終わらせてはなりません。自社のビジネスモデルそのものを問い直し、持続可能な未来から逆算して今を変えていく。そんな戦略的な経営こそが、停滞する日本経済を再び世界へと羽ばたかせる起爆剤になると期待しています。
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