わずか数秒の奇跡を証明せよ!線虫の「嗅覚」研究が世界最高峰の科学誌を揺らした日

2019年12月03日、線虫によるがん検査で注目を集めるHIROTSUバイオサイエンスの広津崇亮社長が、若き日の情熱的な研究生活を振り返りました。東京大学の博士課程に進学したばかりの広津氏は、恩師である飯野雄一先生の助言をきっかけに、線虫の「交尾行動」と並行して「嗅覚」という未知の領域へ足を踏み入れることになったのです。

研究の鍵を握っていたのは、細胞内で情報を伝える「シグナル伝達」という仕組みでした。中でも「Ras-MAPK経路」と呼ばれる経路が、線虫の鼻にあたる機能に関わっているのではないかという仮説が立てられました。当時、この経路は細胞の成長や発生といった数時間単位の現象に関わるものというのが生物学界の常識だったのです。

しかし、広津氏が挑んだのは「数秒単位」で反応する嗅覚の世界でした。常識を覆す発見に、氏は「世界中で自分だけがこの凄さを知っている」という、心臓が跳ねるような高揚感を覚えたといいます。このアドレナリン全開の勢いで執筆された論文は、ついに世界最高峰の科学誌「ネイチャー」へと投稿されることになりました。

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世界一高い壁「ネイチャー」への挑戦と可視化の壁

意気揚々と挑んだ最初の投稿でしたが、ネイチャーの壁は高く、結果は無慈悲にも不採択でした。査読と呼ばれる専門家による厳しい審査では、その新しさは認められつつも「説得力が足りない」との評価を受けたのです。当時の技術では、生体内のミクロな反応をリアルタイムで捉える高性能なカメラなどは存在しませんでした。

広津氏は諦めることなく、目に見えない分子の動きを「可視化」する独自の技術開発に乗り出します。遺伝子を操作して反応を証明する地道な作業を繰り返し、ついに匂いに反応してMAPKが活性化する瞬間を捉えることに成功しました。この執念が実を結び、2000年03月に論文はついにネイチャー誌上へと掲載されたのです。

インターネットが普及しきっていない当時、日本の書店で手に入る唯一の国際科学誌がネイチャーでした。広津氏が発売当日に書店へ駆け込んだというエピソードからは、研究者としての純粋な喜びが伝わってきます。SNS上でも「常識を疑う姿勢こそがイノベーションの源泉」「線虫研究の原点がここにある」と、多くの共感と称賛を集めています。

一見すると地味な線虫の研究が、現在の画期的ながん検査技術へと繋がっている事実に、私は深い感動を覚えずにはいられません。既存の定説に疑問を持ち、自らの手で証拠を創り出す。その執念と情熱こそが、人類を救う大きな一歩になるのでしょう。若き日の広津氏が感じた震えるような興奮は、今も形を変えて私たちの未来を照らしています。

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