2020年の夏、世界中が熱狂に包まれる東京五輪・パラリンピックの開幕まで、残すところあと8カ月となりました。しかし、祭典を目前に控えた今、中国地方のビジネス現場からは意外なほど冷ややかな声が聞こえてきます。帝国データバンク広島支店が2019年10月後半に実施したアンケート調査によると、五輪が自社の業績に「プラスの影響がある」と答えた企業はわずか9.6%にとどまり、地元経済の期待感は大きく冷え込んでいるようです。
この数字を詳しく見ていくと、開催が決定した直後の2013年時点では23.5%の企業が期待を寄せていただけに、その落差は歴然としています。一方で「マイナスの影響がある」と危惧する声も7.3%に達しており、もはや五輪は手放しで喜べる特需ではないという現実が浮き彫りになりました。SNS上でも「結局、盛り上がっているのは東京だけではないか」といった、地方と都市部の温度差を嘆くユーザーの投稿が散見される状況です。
「東京一極集中」と準備への疲弊に悲鳴を上げる現場
今回の調査では、企業の切実な本音も数多く寄せられました。広島県の紙加工品製造業からは「東京一極集中の弊害が加速する」との懸念が示されています。一極集中とは、人口や経済活動、行政機能などが特定の都市に過度に集まる現象を指しますが、五輪を契機にこの流れに拍車がかかることを地方企業は最も恐れています。本来、日本全体を活性化させるべきイベントが、皮肉にも地域格差を広げる火種となっているのかもしれません。
さらに、物流や建設の現場からは「世の中が準備で疲弊している」という厳しい指摘も届いています。五輪に向けたインフラ整備や輸送需要の急増は、人手不足に悩む地方の建設・運送業界にとって、ビジネスチャンスどころか業務過多による疲弊を招く要因となっているようです。岡山県の卸売業者からも、現場の負担ばかりが増していく現状への危機感が滲み出ており、華やかな舞台の裏側で蓄積されるストレスが無視できないレベルに達しています。
また、島根県の卸売業者が語った「地方にはお金が落ちない」という言葉は、現在の地方経済の閉塞感を象徴していると言えるでしょう。実際に、63.5%もの企業が「業績に影響はない」と回答しており、五輪という巨大な経済効果が地方の隅々にまで波及することへの諦めが広がっています。日本経済全体を牽引する力として期待されたはずの祭典が、地方にとってはどこか遠い世界の出来事のように感じられているのが実情です。
私個人の意見としても、スポーツの祭典が持つ高揚感は素晴らしいものですが、それが一部の都市の利益に終始してしまうのであれば、本当の意味での「日本の成功」とは呼べません。持続的な経済成長に有効だと見る企業も48.4%と半数を割り込んでおり、今後は五輪後の「反動」を見据えた、より現実的で地域に寄り添った経済対策が求められるでしょう。祭典の成功は、地方の企業がどれだけ笑顔になれるかにかかっているはずです。
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