2019年6月3日、内閣府が公表した若者の国際的な意識調査の結果は、私たち日本の社会が抱える一つの大きな課題を突きつけました。この調査は、日本、アメリカ、韓国、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンの主要7カ国の13歳から29歳の男女を対象に、インターネットを通じて2018年11月から12月にかけて実施され、各国1000人超の若者から回答を得たものです。このデータから浮き彫りになったのは、日本の10代・20代の若者が、他国の同世代と比べて海外への関心が低い「内向き」な傾向が強いという実態でしょう。
特に顕著なのが、短期留学を含む「留学をしたい」と回答した若者の割合で、日本はわずか32.3%にとどまり、調査対象国の中で最も低い水準となりました。最も高かった韓国の65.7%、次いでアメリカの65.4%と比べると、その差は歴然としています。さらに、「留学したいとは思わない」という明確な拒否の姿勢を示した日本の若者は53.2%に上り、「分からない」と回答した14.5%と合わせると、留学に対して消極的な若者が大多数を占める状況が確認されています。
また、「将来、外国に住みたいか」という質問に対しても、日本の若者は海外生活への強い願望を持っていないようです。「一定期間(1年以上)住みたい」と「移民として永住したい」を合わせた割合は19.4%と、これもまた7カ国中最下位でした。対照的に、「ずっと自国に住みたい」と回答した割合は42.7%で、これは対象国の中で最も高い数値となっており、日本の若者が自国志向である傾向を裏付けていると言えるでしょう。
この結果について、SNSなどでは「若者が悪いのではなく、日本の経済や環境がそうさせているのではないか」「留学や海外で働くための金銭的・精神的なハードルが高い」「日本での生活に十分満足している証拠では」といった、社会構造や経済状況に原因を求める声が多く見られました。特に、昨今の日本の経済成長の停滞や、新卒一括採用に代表される日本特有の雇用システムが、若者の海外挑戦への意欲を削いでいる可能性は否定できません。こうした社会の状況を鑑みると、若者の「内向き」化は彼ら個人の責任というよりも、社会全体で真剣に考えるべき問題ではないでしょうか。
さらに、国際社会の一員として役割を果たすために求められる「異文化理解力・対応力」についての自己評価も、日本の若者は他国に比べて低い結果となっています。具体的には、この能力が「十分ある」または「ある程度ある」と答えた日本の若者は合計で29.4%にとどまり、これもまた最低の結果でした。この意識調査が実施された時点では、2020年に開催が予定されていた東京オリンピック・パラリンピックに向けて多くの外国人が来日することが見込まれており、国際交流の機会が増加すると予想されていました。それにもかかわらず、この「異文化理解力」に対する自信のなさを示す数値は、外国人とのコミュニケーションや共存に消極的である可能性を示唆していると言えるでしょう。この能力は、異なった文化や価値観を持つ人々の考え方を理解し、適切に対応できるスキルを指すコンピテンシー(competency)の一つです。国際化が叫ばれる現代において、この能力が低いと自己認識していることは、今後の日本の国際的なプレゼンスに影響を及ぼしかねません。
私自身、編集者として、この調査結果は日本の将来にとって楽観視できない状況だと感じています。もちろん、自国を愛し、国内での生活に満足することは素晴らしいことです。しかし、グローバル化が加速する現代において、他国の文化や考え方に触れ、視野を広げる経験は、個人の成長だけでなく、日本の国際競争力を高めるためにも極めて重要です。留学や海外生活は、多様な価値観に触れ、自分の常識が通用しない環境で問題を解決する力を養う最高の機会です。この「内向き」な傾向を反転させるためには、語学学習のインセンティブ向上や、留学や海外就職をサポートする公的・私的な支援の拡充が急務でしょう。若者たちが「海外」を遠い世界ではなく、手の届く選択肢の一つとして捉えられるような環境を、社会全体で作っていく必要があるのではないでしょうか。

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